【政策実現!】医療的ケア児・重症心身障害児を育てる家族の支援が拡大しました!
朗報です!
2023年末にお知らせ(過去ブログ参照:https://note.com/komazaki/n/n0e49663b30f7)した令和6年度以降の障害福祉サービスの報酬が決定し、医療的ケア児を中心としたご家庭への支援が大きく拡充されました!
(厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の基本的な方向性について」
https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001176056.pdf)
フローレンスが連携団体である全国医療的ケア児者支援協議会や「永田町こども未来会議」のメンバーと一緒に提言してきた内容が、無事に政策として実現しました。
厚生労働省・こども家庭庁の皆さん、本当にありがとうございます!
今回は、改定のなかでも特に注目すべき点を4つ紹介します。
①通所施設でも医療的ケア児を長時間預かれるように!保護者の就労につながることを期待
長年僕たちが頭を悩ませてきた課題の一つが、
「医療的ケア児の保護者が働きたくても働けない問題」です。
一般的に、保護者が就労する場合にはこどもは保育所に通いますよね。
しかし、胃ろうや呼吸器などのデバイスを24時間装着している医療的ケア児や重い障害のある重症心身障害児の通える保育園というのは非常に稀です。
そうしたお子さんが通うのが児童発達支援・放課後等デイサービス(通称:障害児通所支援)ですが、障害児通所支援では保護者の仕事終わりまで長時間の預かりはできませんでした。
なぜなら障害児通所支援の役割は「療育」であり、保育園のような「就労支援」ではないから。
短時間の療育・発達支援が終わったら、その後こどもを預かってもらえる場所がない。こどもが家にいれば親は付きっきりでケアをするので、働く時間なんて取れない。
日本全体では「障害児を育てる親は、働くことができない」ということが、あたりまえだったのです。
フローレンスはこの問題の解決のため、2014年に長時間預かりを行う「障害児保育園ヘレン」を作りました。
けれども今回の報酬改定によって、障害児通所施設(児童発達支援、放課後等デイサービス)の役割として「預かりニーズへの対応」が明記されました。
利用児童本人の療育・発達支援だけではなく、就労など家庭全体のニーズに応じた「預かり」が可能になり、それに応じた事業者の収入も確保しやすくなります。
「障害のある子を育てる親でも、キャリアを諦めず働き続けられる」社会により近づいたといえるでしょう!
②障害児通所施設の定員が緩和され、「預け先が見つからない」問題が一歩改善へ!
障害児を預かる児童発達支援事業所や放課後等デイサービスですが、すべての障害児を受け入れるためには全く数が足りていません。
その要因のひとつは、「定員5名の壁」と言われる問題。
実は、障害児通所支援施設で重い障害のある子(重症心身障害児)を受け入れる場合、定員を5名にしたときが基本報酬が一番高く設定されており、それ以上の人数を受け入れると報酬が下がる仕組みになっているんです。
この仕組みがあることにより、本来であればより多くのこどもを受け入れられる施設でも、利用人数を5人以内に調整してしまう場合があります。
専門性の高いスタッフが揃い、設備や配置的に5人よりも多くお子さんを預かれるキャパシティがある場合でも、預かり定員を5人にする制度上のインセンティブがあるのは、とてももったいない。
報酬設定の制約を解消し、子どもたちの受け入れ先を増やせるようにしてほしい!!
そう提言を続けた結果、今回の報酬改定によって「定員7名まで」増やしても基本報酬が下がらない仕組みになりました!
1つの施設で受け入れ定員を増やしやすくなったことにより、
「こどもの預け先が見つからない」問題が一歩改善に向かいます!
③荷物が多くケアも必要な医療的ケア児に補助がつき、送迎問題が一歩前進!
医療的ケア児を育てる家族を悩ませるもう一つの問題が、「こどもの預け先が遠すぎる問題」。
前述の通り障害の重い子を預ける施設の数は限られているため、運良く預け先が見つかったとしても、家から遠い施設を利用せざるを得ない場合があります。
しかし都市部では車を持っていないご家庭も多く、また就労をしているご家庭の場合、朝と夜に遠い距離を毎日送迎することは現実的ではありません。
だから施設側としては、ぜひご家庭までの送迎を実施したい!
しかし、そこに立ちはだかるのがコストの問題なのです…。
当然送迎距離が長ければ長いほどガソリン代がかかりますし、医療的ケア児の場合、ドライバーの他に看護師の同乗が必要なためさらにコストが増えます。
なのに国の送迎コストが少なすぎる!
そもそもの補助額が少ない上に距離に応じた加算もなく、施設から遠い距離に住む医療的ケア児ををしようとすれば、ほとんど事業者の持ち出しになってしまいます。
そのため、「利用できるご家庭のエリアを限定」せざるを得ない施設も多く、家から遠いことを理由に施設を利用できないご家庭もたくさんいるのです。
でも、今回の報酬改定によって、送迎コストに対する国からの補助が厚くなりました!
正直まだ十分とは言い難い水準ではありますが・・・
今後、施設の負担が減り、距離が遠いご家庭でも、障害児通所支援を利用できるようになる第一歩として歓迎したいと思います!
④居宅or通所、どちらか一方の療育しか受けられない問題が改善!
医療的ケア児や、重症心身障害児を育てる家庭には、「自宅(居宅)か施設(通所)のどちらか一方でしか療育を受けられない問題」もあります。
「居宅訪問型児童発達支援」は、自宅で療育を受けられる制度です。
医療的ケア児や重症心身障害児は、外出による疲れで容態が悪化することもあるので、外に出ることなく療育を受けられるのはありがたい制度ですよね。
一方「通所型児童発達支援」では地域にある施設で療育を受けられます。
同じ年代の子と交流し、幅広い遊びや刺激に触れられるのは、家族以外との交流が限られてしまいがちな障害児にとって大きなメリットです。
どちらも使えたらいいのに、これまでは、居宅訪問型と通所型を同時に使うことは原則認められていませんでした。
容態を優先するか、こどもの育ちを取るか…というトレードオフを迫られていたんです。
そのルールが、今回緩和されて、支援を組み合わせて使うことができるようになりました!
これで、障害児の体調の波に合わせて、使う支援を選ぶことができる環境に一歩近づきしました!
より家庭やこどもの個別性を鑑みた環境づくりをしてくれてありがとうございます!
さいごに
このほかにも
・医療的ケア児の入浴支援
(家で保護者だけが対応するのはとても大変だったので、すごく大事!)
・オンラインでの相談援助の推進
(移動が大変な医療的ケア児親子にとって助かる!)
など、こどもの療育・発達支援だけでなく、家庭全体に対する支援が強化!
社会全体で医ケア児家庭を支えていく、という想いがこもった報酬改定でした。
改めて、素晴らしい報酬改定を進めてくださったこども家庭庁や、委員のみなさん、他事業者のみなさん、本当にありがとうございました!
【ソーシャルアクション・政策提言は皆さんのご支援で運営しています】
フローレンスは、支援現場を自分たちの手で運営しながら、そこから日々得られる親子の生の声や、事業ノウハウを社会に広げ、国や地域の制度に具体的施策を提言をすることで、日本の子どもを取り巻く環境、綱渡りを強いられているハードな子育て環境を、アップデートしていきます。
今回のように障害福祉サービスに対する提言活動ができるのは、寄付者の皆さんのお陰です。
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