駒崎 弘樹 公式ブログ 提言・解説・アイディア

【解説とお願い】「こども誰でも通園制度試行的事業」の中間取りまとめ公表。地方議員のみなさん、導入に向けて議会質問してください!(議会質問テンプレあります)

 

 就労の有無に関わらず保育園を利用できるようにする制度、「こども誰でも通園制度(仮称)」。僕らフローレンスが「みんなの保育園」という名称で政府に訴えかけてきた政策で、2023年度には全国でモデル事業がスタートしました!

 

 

 今年9月から、本制度の本格実施に向けた試行的事業の在り方に関する検討会が開催されていて、僕も有識者の1人として参加し、提言を行ってきました。

 

 

 そして、12月25日の検討会で「中間取りまとめ」が公表されました!

 

※こども誰でも通園制度(仮称)の本格実施を見据えた試行的事業実施の在り方に関する検討会における中間取りまとめ(案)について

https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/0bce7a5a-1447-4ca5-af04-d3c5616eff9e/42f9aca3/20231225_councils_daredemotsuuen_38XFPZ8w_07_0.pdf

 

 

 この「中間取りまとめ」自体は「試行的事業」に関するものとはいえ、本制度の元になる重要なものです。

 

 

 こども家庭庁は、2023年度中から自治体が試行的事業を実施できるよう、予算案に入れています。

 

(出典)こども家庭庁「令和6年度保育関係予算案の概要」

https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/0bce7a5a-1447-4ca5-af04-d3c5616eff9e/eb75df1f/20231225_councils_daredemotsuuen_38XFPZ8w_03_0.pdf

 

 

 制度の発案者、そして検討会に参加してきた立場から、制度の概要と課題を解説しますっ!

 

 

【制度の概要】

 

 まずは、「こども誰でも通園制度」って何なの?って人に向けて、簡単に概要をご紹介しますね。

 

 

・何のための制度なの?

→「全てのこどもの育ちを応援し、こどもの良質な成育環境を整備すること」を目的とした、こどもの成長を中心に考えた制度です。この点が、親の通院やリフレッシュの際に利用する「一時預かり事業」との一番の違い。

これまでは家で保護者と過ごすことの多かった「無園児(保育園や幼稚園に通っていないこども)」が保育園・幼稚園に通うことで、こどもの発達促進や「孤立した子育て」の予防が期待されます。

 

 

・誰が使えるの?

親の就労要件を問わず、保育園等に通っていない0歳6ヶ月~満3歳未満のこどもは誰でも利用することができます。

 

 

・どれくらいの時間使えるの?

国が設定した月一定時間の利用可能枠内で利用できます。

今回の試行的事業では、「月10時間」の上限が設定されています。

 

 

・どこで預かるの?

→市町村から指定を受けた保育所、認定こども園、小規模保育事業所、家庭的保育事業所、幼稚園 、地域子育て支援拠点、児童発達支援センター等の施設での預かりが想定されています。

 

 

・いつから始まるの?

2025 年度に「子ども・子育て支援法」に基づく「地域子ども・子育て支援事業」として制度化し、2026 年度からは「子ども・子育て支援法」に基づく新たな給付として全国の自治体において実施される予定です。

制度開始に向けて、2023年度中から自治体が試行的事業を開始できるように、こども家庭庁は令和5年度補正予算をとっています。

 

 

【中間取りまとめ公表も、残る課題】

 

 まずは、この素晴らしい制度の実現に向けた検討が進んでいることが嬉しい。

こども家庭庁のみなさん、取りまとめいただきありがとうございます!!

 

 

 ただ、制度化に向けてはまだいくつか課題が残っているので、試行的事業をやりながら改善の検討をしてほしいです。

 

 

(1)利用時間「月 10 時間」上限

 

 利用時間は、一人当たり「月 10 時間」を上限として行うことが想定されています。

 

 

 「月10時間」って、毎週1回通うとすると1日たったの2.5時間

 

 

 こどもは泣いて終わります。

親も家事を1つしたら即お迎えです。

保育士もいつまで経っても慣れないこどもを預かることになります。

 

 

 10月の検討会で僕が報告した、保育現場に対するアンケート調査でも、「月10時間では少なすぎる」といった声が多数集まりました。(アンケートの詳細は過去ブログをご覧ください:https://www.komazaki.net/activity/2023/10/post13858/

 

 

 

 全国一斉に確実に実施するため、って話だけど、地域によっては定員割れでガラガラな保育園だってある。

 

 

 国が定める最低ラインは「月10時間」だとしても、なんとか自治体ごとに利用時間を上乗せできる仕組みにしてほしいっ!

 

 

(2)委託料「こども一人1時間あたり850円」

 

 来年度の試行的事業では、保育園・幼稚園などの事業者が、市町村から「委託料」を受け取って預かりを行います。

 

 

 保育事業者としては当然「委託料」の金額が気になりますが・・・

なんと、こども家庭庁案では「こども一人1時間あたり850円」が基本とのこと。

 

 

 正直、これは少なすぎるっ!!

 

 

 この単価で、赤字を回避できるだけの収入を得ようとすると、事業者は月曜から土曜まで週6日、朝から晩まで隙間なくこどもを預かる必要があります。

 

 

 「保育園だったら、朝から晩までずっとこどもを預かるのは当然でしょ?」

って思うかもしれないけど、実はここにトラップが。

 

 

 前述の通り、「こども1人あたり月10時間」の利用制限がある限り、1人のこどもが通園できるのってせいぜい週2~3時間しかないんです!(毎週1回通園する場合、2.5時間/週✕4週で月10時間)

 

 

 1人あたり週2~3時間ずつしか通えないこどもたちで1日の預かり枠をビッチリ埋めるとなると、1日を2~3時間おきに4分割、5分割して、利用者をパズルのように組み合わせないといけない。

 

 

 事務工数や保育負担を考えると、非現実的と言わざるを得ません・・・。

 

 

 制度化の際には、やる気のある事業者が躊躇うことなく手挙げできるような水準の給付になることを切に願っています。

 

 

(3)対象年齢「0歳6ヶ月から満3歳未満児」

 

 来年度から始まる試行的事業の対象年齢は、「0歳6ヶ月から満3歳未満児」が想定されています。

つまり、0歳6ヶ月未満のこどもは制度の対象に含まれていない。

これには、大きな懸念を抱いています。

 

 

 今、日本で虐待死するこどもの約半数は0歳児。0歳の赤ちゃんが、2週間に約1人亡くなっているんです。※1

 

 

 ただでさえ、0歳6ヶ月未満児の保育の受け皿は少なく、現在こども家庭庁が想定している産後ケア事業や一時預かり事業ではカバーできる体制が整っていません。

 

 

 0歳6ヶ月未満児に、広くセーフティーネットを広げていくために、少なくとも、6ヶ月未満児を預かるノウハウを持つ園や預かりたい園だけでも「預かる」選択ができるようにしてほしいです。

 

 

 制度化に向け、0歳6ヶ月未満のこどもも「こども誰でも通園制度(仮称)」で預かることができるよう、引き続き提言していきます!

 

 

【地方議員のみなさん、導入に向けて動いてください!】

 

 まだまだ課題も残る本制度ですが、一つひとつの自治体で試行的事業を実施し、本制度がより良い制度になるようにブラッシュアップしていくことが重要です。

 

 

 それが、子育てをもっと「社会全体で」担う「こどもまんなか」社会に繋がります。

 

 

 地方議員のみなさん、こども誰でも通園制度(仮称)試行的事業の導入の必要性を議会で訴えてください!

 

議会質問案はこちら:

https://florence.or.jp/files/data/shitsumonn_20231226.pdf

 

 

 みなさん、ご協力よろしくお願いしますっ!

 

 

【ソーシャルアクション・政策提言は皆さんのご支援で運営しています】

 

 フローレンスは、支援現場を自分たちの手で運営しながら、そこから日々得られる親子の生の声や、事業ノウハウを社会に広げ、国や地域の制度に具体的施策を提言しています。それにより、日本のこどもを取り巻く環境、綱渡りを強いられているハードな子育て環境を、アップデートしていきます。

 

 

 こうした提言活動ができることは、寄付者の皆さんのお陰です。

 

 

 制度や政策を変える活動を応援したい人はぜひ、フローレンスのマンスリーサポーターになってください!

https://florence.or.jp/donate/form/monthly/

 

 

参考:

※1こども家庭庁「こども家庭審議会児童虐待防止対策部会 児童虐待等要保護事例の検証に関する専門委員会 こども虐待による死亡事例等の検証結果等について第19次報告」2023年 

 


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