駒崎 弘樹 公式ブログ 提言・解説・アイディア

【政策実現】「産後パパ育休」バージョンアップ!育休前賃金の100%保障へ

 

 めちゃくちゃ嬉しいニュースが飛び込んできましたー!

 

 

政府が、父親が「産後パパ育休」を取得し、母親も育児休業を取った場合、休業前の賃金を「夫婦ともに」実質的に100%保障するという方針を発表しました!!

 

 

 期間は1か月分にする方向で検討中らしいです。すごいバージョンアップ!

 

 

 父親だけじゃなくて、母親の方の賃金も保障するっていう点もグッド。

 

 

 「産後パパ育休」っていうのは、「出産後8週間以内」に「4週間(28日)※4分割可能」まで男性が育児休暇を取得できるもので、22年10月に始まった新しい制度(過去の記事参照:https://www.komazaki.net/activity/2021/06/post11463/)。

 

 僕と小室淑恵さん、天野妙さん、塚越学さんらが4年近く政策提言して、やっと始まった制度で、すごい画期的なものなんです。ただ、「4週間も休んだらパパの給料が減って困る」っていう意見がたくさんあったんですね。

 

 

 でも、今回のバージョンアップ後は、「給料減るし、休めない」なんて言えませんよ。

 

 

 厚生労働省が発表した「令和3年度雇用均等基本調査」によると、男性の育児休業の取得率は13.97%(※1)。

 

 

 上昇しているのは良いけど、こんな低水準じゃ全然ダメ!

 

 

 これからパパになる方々、給料の心配なくなったし、安心して4週間育休取りましょうっ!!

 

 

 だって、パパの育休はメリットがいっぱいだから。

 

 

 

【産後パパ育休のメリット】

 

 産後パパ育休には大きなメリットがあります。

 

・「産後うつ」になる母親を減らすこと
・第2子以降を産む人が増えること


が期待できる
んです。

メリット1:「産後うつ」になる母親を減らす

 

 

 産後うつとは、分娩後の数週間、ときには数か月後まで続く極度の悲しみや、それに伴う心理的障害が起きている状態を言い、出産した母親の10~15%が発症するそうです(※2)。

 

 

 2018年、厚生労働省研究班(主任研究者:国立成育医療研究センター・森臨太郎氏)(※3)が、

 

・2015~2016年に妊娠中や産後1年未満に死亡した妊産婦357例を調べたところ、死因の第1位は「自殺」で102 例
・うち、産後1年未満の自殺が92例

との衝撃的な数値を発表しました。

画像

(出典)NHK「知ってほしい”産後のうつ”~92人自殺の衝撃~」
https://www.nhk.or.jp/d-navi/sci_cul/2018/09/story/special_180914/

 

 産後うつを引き起こしている要素として、分娩後にみられるホルモン濃度の急激な低下の他、「パートナーや家族からのサポートの不足」や「夫婦関係の問題、失業中のパートナー、経済的な問題、パートナーの不在などから生じるストレス」などが関与していると言われています(※2)。

 

 

 また、海外の研究(※4・5)でも、「パートナーが乳児のケアに関与しないことが、母親の産後うつと強く関係している」と結論付けるものがあります。

 

 

 産後の母親が自ら命を絶ってしまう悲惨なケースを減らすには、産後うつを発症する人が多いと言われる出産直後から、父親(パートナー)が赤ちゃんのお世話をし、母親の心身の負担を軽くすることが不可欠です。

 

 

 そのためにも、母親だけでなく父親も産後に育休を取れるようにすることが重要です。

 

メリット2:第2子以降を産む人が増える=少子化対策としても有効

 

 ご存知のとおり、近年の日本の出生率はヤバいことになってますよね。
先月厚労省が発表した2022年の出生数は前年比5.1%減の79万9728人
80万人割れは比較可能な1899年以降で初めて。

 

 

 想定より10年以上早い80万人割れという状況で、政府は、「異次元の少子化対策」をまとめるべく必死です。

 

 

 今回の産後パパ育休のバージョンアップも、政府の「少子化をなんとかしたい!」という思いの現れだと思います。

 

 

 だって、実際、産後パパ育休は、少子化対策としても有効なんですから。

 

 

 第2子以降をもうけるかどうかは、第1子の育児における夫の育児参画時間と相関していることを示す調査結果があります。

 

 

 まず、厚生労働省のデータから、

 

休日、夫が全く家事・育児を行わない場合、第2子以降の子どもをもうける夫婦はたったの10%
・一方、夫が6時間以上家事・育児を行う場合、第2子以降の子どもをもうける夫婦は87%

 

ということがわかっています。

 

 

すごい違いじゃないですか?

画像

(出典)内閣府「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)レポート2016」p.140 http://wwwa.cao.go.jp/wlb/government/top/hyouka/report-16/h_pdf/s3-4.pdf

 

 

 また、東京大学大学院経済学研究科の山口慎太郎教授によると、父親が5週間育休を取得した場合、3年後の家事時間が、なんと2割も増したというカナダの調査結果があるのだそう(※6)。

 

 約1か月の育休が、その後の父親の行動を変えるってことなんですよ。

 父親が家事・育児に参加するようになれば、母親の負担は減って、もう1人産み育てたいと思えるようになるのも納得ですよね。

 

【日本のパパたち!育休4週間取ろう!】

 

 

 メリットだらけの産後パパ育休。給料が減るっていう大きなデメリットもなくなるんだから、取らない理由ないっしょ。

 

 

 僕は、最終的には、父親だろうが母親だろうが、子どもが生まれたら数か月~1年は育児に専念できるのがあたりまえの社会になってほしいと思ってます。産後パパ育休制度は大きな第一歩。

 

 

 遅くとも10年後には、「ワンオペ育児」「孤育て」っていうワードは死語にしたい。

 

 

 そんな社会になるためには、今のパパ・ママ1人1人が行動しなきゃいけないんです。パパ・ママが協力して育児をし、子どもたちに、それが「あたりまえ」なんだということを背中で伝えていきましょうよ

 

 

 そうしたら、子どもが大人になったときに、きっと社会は変わってくる。

 

 

 日本のパパ!「産後パパ育休」を取りましょう!!

 

 

 

※1 厚生労働省「令和3年度雇用均等基本調査」の「事業所調査 結果概要」p.22
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/71-r03/03.pdf
※2 MSDマニュアル家庭版「産後うつ病」
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0/22-%E5%A5%B3%E6%80%A7%E3%81%AE%E5%81%A5%E5%BA%B7%E4%B8%8A%E3%81%AE%E5%95%8F%E9%A1%8C/%E7%94%A3%E8%A4%A5%E6%9C%9F/%E7%94%A3%E5%BE%8C%E3%81%86%E3%81%A4%E7%97%85?query=%E7%94%A3%E5%BE%8C%E3%81%86%E3%81%A4
※3 国立成育医療研究センター「人口動態統計(死亡・出生・死産)から見る妊娠中・産後の死亡の現状」(2018年)
https://www.ncchd.go.jp/press/2018/maternal-deaths.html
※4 N Séjourné , M BeauméV VaslotH Chabrol “Effect of paternity leave on maternal postpartum depression”
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22342108/
※5 N. Séjourné ,V. Vaslot,M. Beaumé,N. Goutaudier &H. Chabrol
“The impact of paternity leave and paternal involvement in child care on maternal postpartum depression”
https://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1080/02646838.2012.693155
※6 聖教新聞「【インタビュー】お父さんが“育休”を取ると1カ月で人生が変わる――『「家族の幸せ」の経済学』著者・山口慎太郎さんに聞く」
https://www.seikyoonline.com/article/91B548005E62B8B38A46FCBC0DF86942

 

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