駒崎 弘樹 公式ブログ 提言・解説・アイディア

(多分)世界初の座組みで「こどもウェルビーイング」国際会議を開いてみた

 みんな、ウェルビーイングって知ってる??

 

 

まあまあよく聞くけど、よお分からんって感じだよね?

 

 

WHOによると、

ウェルビーイングとは、個人や社会が経験するポジティブな状態のことです。健康と同様、日常生活の資源であり、社会的、経済的、環境的条件によって決定される。」※

とのこと。

 

 

ちょっとこの定義は難しいけど、つまり、社会的にも、経済的にも、環境的にも良い感じで、充実していて幸せな状態ってこと。

 

 

いくらお金持ってても、友達いなくて孤立してたら、その人は不幸だろうし、
いくら体が健康でも、メンタル参ってたら、つらいですよね。

 

 

そういう意味で、ウェルビーイングな状態って、僕たち人間の目指す状態を総合的に表しているんですよね。

 

 

で、政治とか政策とかも、言ってみれば国民や住民のウェルビーイングを実現するためにやってるわけですよね。産業振興も、まちづくりも、子育て支援も、何もかも。

 

 

だから、ウェルビーイングを政策目標とか、企業の目的とかにしていこうよっていうグローバルな流れがありまして。

 

 

実は2005年から、ウェルビーイングは世界150カ国で計測されていて、ウェルビーイングが高い国、低い国が分かっているんですよね。

 

 

ほら、北欧が幸福度が高い、みたいなのって、結構有名じゃないですか?

 

 

これって、経済成長率やGDPの代わりに、ウェルビーイングを測り始めてみんな気付いたんですよ。実は。

 

 

それまでは北欧すごい、とかって、みんな知らなかったわけで。

 

 

そういう意味で、概念をつくって、それを測ることで、すごい学びが得られるんですよね。そしてその学びに基づいて、政治や政策を変えていくことで、多くの人達の課題が解決され、人生の質が豊かになっていくと。

 

 

【ウェルビーイングを測る2つの側面】

 でも「このウェルビーイングって、どう測るの?」って思いませんでした?

 その人が心身ともに健康で社会的にも孤立してなくて満たされてるって、どう測るの?と。

 

 

 2つあって、客観的ウェルビーイングと、主観的ウェルビーイングがあるんです。

 

 

 客観的ウェルビーイングっていうのは、

 個人の収入、国だったら一人あたりGDPや、平均寿命や教育を受けられている年数とかとか。

 

 

 主観的ウェルビーイングっていうのは、彼らが自分の人生にどの程度満足していて、未来に希望を持てているか、という主観。

 

 

 前者の客観的ウェルビーイングは比較的データが取りやすいのだけど、後者の主観的ウェルビーイングのデータって、アンケートとかで聞かないといけないから、結構大変で。

 

 

 別に前者だけで良くない?って今思いませんでした?

 いや実は、今注目されているのは、むしろ後者なんです。

 

 

 だって、例えば日本とかって、客観的ウェルビーイングはめっちゃ高いんですよ。医療も教育も充実しているし。

 

 

 でも、主観的ウェルビーイングはすごく低い。幸せ実感が薄い。

 

 

 逆に途上国でもイキイキと暮らしている人がいっぱいいたりして。

 

 

 なぜ?って感じですよね。

 

 

 そう、人間のウェルビーイングって、どうやら客観的な社会インフラとか整えるだけでも、どうやらダメっぽくて。

 

 

 面白いですよね。

 

 

【こどもウェルビーイングは発展途上】

 そんでもって、驚くべきことに、このウェルビーイングのデータって、実は大人に偏っているんです。ギャラップ社が150カ国で取ったデータって、15歳以上なんです。

 そう、基本、「青年〜大人のウェルビーイング」なんですよね。

 

 

 あれ、こどもは?

 

 

 一応あるにはあって、OECDとかユニセフとか、国際機関が取ってるっちゃ取ってる。

 

 

 でも、客観的ウェルビーイングにかなり偏っていて、主観的ウェルビーイングを調査している場合でも、対象国がすごく限られてしまっていたりするんです。

 

 

 PISAっていう世界的な学力調査の中で、一応主観的ウェルビーイングをやっぱり15歳の子たちに聞いてるけど、先進国中心に50カ国くらいだし、15歳未満の子たちには聞けてないんですよね。

 

 

 つまり、僕たちは、どの国でこどもたちがウェルビーイングな状態なのか、実は知らないっていう状況なんです。どんな政策が子どもの総合的なウェルビーイングを高めるか、まだよく分かっていない、ということなんですよ。結構びっくりしませんか?

 

 

 

【なんでこどものウェルビーイングが大事?】

 まだ分かってないことが多いんだけど、分かっている範囲でいうと、実はこどもが幸せかどうかっていう意味でウェルビーイングは重要なわけなんだけど、その影響は子ども時代だけに限られてないんだっていう研究結果があって。

 

 

 子ども時代にウェルビーイング度が低いと、後の人生において、低収入になったり、健康を害したり、人間関係をうまく築くことができなかったりすることが分かっているんです。

 

 

 で、それがなんと、GDPの平均3.4%分の喪失をもたらしちゃう、っていう研究結果もあるわけなんです。

(右端がOECD平均3.4%)

OECD ”The economic costs of childhood socio-economic disadvantage”(2022年11月)p.4

https://www.oecd.org/wise/The-economic-costs-of-childhood-socio-economic-disadvantage-Policy-Insights-November-2022.pdf

 

 

 そう、こどものウェルビーイングをないがしろにすることで、国や社会全体がダメージを受けちゃうっていう話なんですよ。これ、ヤバくないですか!?

 

 

 逆に、子どもたちがウェルビーイングな状態だったり、幸せを実感している状態だったりすると、それが未来の大人たちをいい感じにして、社会全体もいい感じになる、っていうことなわけで、やっぱり子どもの幸せって、情緒的な意味だけじゃなくて、社会経済的にすごい大事なんじゃん!っていう話ですよ。

 

 

【なので国際会議やってみました】

 そんなめちゃ大事な子どものウェルビーイングなので、子どものウェルビーイングを研究している人たちを集めて国際会議をやってみました。

 

 

 やるにあたって、中心となってくれたのが、ウェルビーイング財団石川善樹さん。

 

 

 善樹さんとはサウナ仲間で一緒に旅行する仲で、ほとんど何やってるか知らなかったんですが、ふとしたことで仕事の話になったら、「え、子どものウェルビーイング大事じゃない?」ってことで初めて一緒に仕事をすることになりました。

 

 

 彼のネットワークで、ウェルビーイングの第一人者たちが集ってくれました。

 

 

オックスフォード大学ウェルビーイング研究センター ヤン・ド・ヌーブ 教授 と ローラ・テイラーさん

OECD オリビエ博士

ケンブリッジ大学 ホセ・マルケス 氏

ギャラップ社 ラジェッシュ・スリニヴァサン 氏

他、国際機関から数名

 

 

 彼ら曰く、「ウェルビーイング関係者がこんな風に国際的にリアルに集ったのは初めてだ」とのことでした。

 

 

 参加してくださったみなさん、協力してくださった企業や個人のみなさんに、心からの感謝を。

 

 

【みんなデータをほしがってる】

 そんなめちゃ大事な子どものウェルビーイング。みんな口をそろえて「子どものウェルビーイングのデータが全然足りない!特に主観的ウェルビーイング」と言うのです。あ、やっぱりそうなのね、と。

 

 

 「子どもの主観的ウェルビーイングを、いま大人でやっているように世界150カ国でできたら、どんなに重要な示唆を得れるだろうか!」と仰るわけです。

 

 

 たしかにそうですよね。子どもを幸せにする術が、定量的にわかるわけで。

 

 

 これ、日本がイニシアチブを取ってお金を出したら、ギャラップ社とかがすぐやってくれるから、実現できちゃいそうだな、と国際会議に参加する中で、思ったりしたのです。

 

 

【日本にとってもめちゃ重要】

 日本って、こども家庭庁が4月にできるじゃないですか?

 

 

 でも、KPIってないんですよね。

 

 

 いや、こういう政策をやるよ、っていうアクションリストはあるんです。いっぱい。

 

 

 でも、それによって、どう子どもの主観的ウェルビーイングが上がるのか、あるいはこのくらい上げたいよ、みたいなKPIがないんですよね。

 

 

 そうすると、この政策に意味があったのかどうかって、分からないんですよね。

 

 

 うん、超もったいない。

 

 

 しかもですよ、日本の子どもの主観的ウェルビーイングって、すごい低そうなんですよ。なんでかっていうと、類似調査の中で「あなたがつらい時に、自分で何とかすることができると思いますか」っていう自己効力感(self efficacy)をOECDが15歳の子に聞いているんですが、日本はダントツに低いんですよね。

(右端が日本)

OECD ”Starting unequal How’s life for disadvantaged children?”(2022年7月4日)p.28 https://www.oecd.org/publications/starting-unequal-a0ec330c-en.htm

 

 あと、PISAでこれも15歳の子たちに、人生の満足度を聞いているんですが、2015年から18年にかけてダダ下がってるんですよね。特に女子。

 

 

 つまりは、日本は経済的には豊かな方だし、教育も受けられているんだけど、子どもは幸せじゃなさそうな可能性が高くて、せっかくできたこども家庭庁も、指標がないからやたらめったら政策打って、それが効果出てるのかどうかもよくわからなくてっていう、めちゃもったいないっていうか、子どものこと考えたら、これじゃだめじゃん、っていう状況なわけです。

 

 

 つまり、こどもウェルビーイングの国際指標をちゃんと作って、それをもとに世界各国のこどもウェルビーイングを計測して、すごいイケてる国を発見。

 

 

 その国を真似しつつ、自分たちの政策効果をちゃんと測って改善しまくっていけば、日本はキャッチアップ得意だから、子どもが幸せな社会を実現できるぜ、っていうことなんですよ。

 

 

 日本国内でちゃんとこどものウェルビーイングを測れば、例えば「子どもが幸せな県」とか「こどものウェルビーイングをめっちゃ高めている学校」とかが見える化するので、知事とか市長のパフォーマンスも分かるし、教員評価の新しい指標ができますよね。

 

 

 うん、ものさしってめっちゃ大事!!

 

 

【フローレンスと一緒に、新しいものさしを創ろう!】

 そんなわけで、フローレンスは、国内外の専門家の方々とともに、世界的に子どもの主観的ウェルビーイングを計測できるように、日本の政府や企業に働きかけていきたいと思うんです。

 

 

 またあるいは、世界に先駆けてこどもウェルビーイングを測ろうっていう自治体を発掘して、彼らとともに事例を創っていきたいと思っているのです。

 

 

 こどもウェルビーイングという新しいものさしを世の中に生み出したい!と思う、政治家や企業の方々、あるいはそれを応援したいぜっていう方々は、ぜひ力を貸してください。

 こういうのって、僕たちが経済的に儲かるわけではないので、寄付が頼りです。でも、良い寄付になると思います。だって、世の中にないものさしを生み出せて、それが子どもたちの幸せに繋がるんです。これまで見えてなくて、測れなかった課題やチャンスを浮かび上がらせることで。

 

 

 そんな未来を創りたいです。みなさんとともに。

 

 

※WHO”Health Promotion Glossary of Terms 2021”(p.10)

https://www.who.int/publications/i/item/9789240038349

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