駒崎 弘樹 公式ブログ 提言・解説・アイディア

【祝】「骨太の方針2022」にフローレンスが提言した、みんなの保育園、こども宅食、日本版DBSなどが入りました!

 6月7日、「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)2022」が閣議決定されました。

 

 ※骨太の方針2022
「経済財政運営と改革の基本方針2022 新しい資本主義へ~課題解決を成長のエンジンに変え、持続可能な経済を実現~(令和4年6月7日閣議決定)」

 

 志ある議員のみなさんが僕らの話を真摯に受け止め、熱く必要性を訴えてくださったおかげで、孤独や孤立に苦しむ親子への支援につながる「みんなの保育園」「こども宅食」「デジタルソーシャルワーク」に関する文言が入りました!!

 

 そして、来年4月に発足する「こども家庭庁」の目玉施策である「日本版DBS」(子どもたちを性犯罪者から守る仕組み)も、昨年に引き続いて入りました!

 

 

【みんなの保育園】

「全てのこどもに、安全・安心に成長できる環境を提供するため、(中略)未就園児等の実態把握と保育所等の空き定員の活用等による支援の推進、(中略)等に取り組む。」(P.13)

 

 本件、尽力してくださった加藤勝信議員、河西 宏一議員ありがとうございます!

 

 現在の保育制度では、保育園を利用するために「保育の必要性認定」を満たす必要があります。具体的には、両親が就労しているなど所定の条件をクリアしなければならないので、専業主婦家庭等は保育園を利用することができません

 

 つまり、保育園は、基本的に共働き家庭のための施設ってことなんですね。

 でも、保育が必要な家庭、保育がないと困る家庭は、共働き家庭だけでしょうか?

 

 僕は、専業主婦家庭を含め、どんな家庭でも保育園を利用できるようにすべきだと思っています。つまり、保育園は「みんなの保育園」になるべきなんです。

 

 専業主婦家庭(特に幼稚園入園前の家庭)は、「孤独な子育て」に陥りやすく、24時間小さな子どもと過ごすことでストレスがかかり、虐待リスクも高まることがあります。不幸にして虐待が起きてしまっても、誰も気づくことができない・・・

 

 でも、週1日でも2日でも保育園を利用することができれば、保育士が虐待などの異変に気づくことができて、早期に支援につなげることができます。保育園は、保育を提供するだけでなく、子育ての「セーフティーネット」としての重要な役割を担っているのです。

 

 それ以外にも、保育園は「地域のコミュニティのハブ機能」も担っています。保育園利用者は、保育の専門知識を持った保育士や地域の保護者とつながることができ、「孤独な子育て」に陥りにくくなります。

 

 さらに、保育園で幼少期からたくさんの子どもや大人と関わることは、子どもの心身の発達にも大きなプラス効果をもたらします。そして、もし発達に課題がありそうな場合は、保育士が気づくことができ、早期に支援につなぐこともできます。

 

 そう、週1~2日でも保育園を利用することは、親子にとってメリットだらけなんです!

 

 「メリットがあるのはわかるけど、、、待機児童もいるのに、専業主婦家庭の子どもたちを受け入れる余裕なんてないでしょ?」と思う方もたくさんいると思います。

 

 でも大丈夫っ!!

 

 実は、少子化が加速する中、待機児童対策として保育園の施設整備が進んだ結果、待機児童は減少していて、あと2年程度でいなくなると言われているんです。地域によっては、すでに待機児童問題は解消していて、空き定員が増えたために経営が成り立たず、閉鎖する園も出てきています。

 

 まずは待機児童問題が解消している地域で、空き定員枠を活用して専業主婦家庭等に週1~2日保育園を利用してもらいたい。そして、この「みんなの保育園」が徐々に全国に広がり、孤独な育児も悲しい虐待もなく、すべての親子が笑顔で生きられる社会になってほしい!

 

 

【こども宅食】

「こどもの貧困解消や見守り強化を図るため、子ども食堂のほか、こども宅食・フードバンク等への支援を推進する(その際、中間支援法人の活用も検討)」
(P.13)

 
フローレンスがずっと必要性を訴え続け、全国に拡大させてきた出前型(アウトリーチ型)の支援である「こども宅食」に関する文言が今年も骨太方針に入って嬉しいっ!

 

 稲田朋美議員をはじめとする、こども宅食推進議員連盟のみなさん、ありがとうございます!

 

 「困窮を周囲に知られたくない」などの理由でSOSの声を上げずにいたり、時間も心の余裕もなく支援場所にたどり着けない家庭がどこの地域にもいます。周囲に知られないよう支援を届ける「こども宅食」のような出前型の活動で、こうした地域社会から孤立しがちな子育て家庭などの子どもをしっかり見守ることが非常に大事です。

 

 今回の骨太のポイントは、脚注の「中間支援法人の活用も検討」という部分です!脚注だけど、めちゃくちゃ大事!

 

 これは何かっていうと、僕らが提案してきた「政策セカンドトラック」の活用を検討するということです。

 

 「政策セカンドトラック」とは、自治体を介さず、「国→中間支援法人→地域の支援提供団体→支援利用者」というルートで助成金が提供されることです。通常は「国→自治体→地域の支援提供団体→支援利用者」というルート(政策ファーストトラック)です。でも、これだと、せっかく国が予算事業を作ってくれても、自治体の人員不足やノウハウ不足などのために、自治体が事業を導入できず、利用者まで支援が届かない問題があります。(特に、今は自治体もコロナ対応で多忙だったり、デジタル等の新しい分野の事業が次々できて追いつくのが大変です。)これを解決するのが「政策セカンドトラック」です。

 実は、この「政策セカンドトラック」の有効性は実証済みです!

 

 以前のブログ(記事参照)でも書きましたが、令和3年度補正予算の「ひとり親家庭等のこどもの食事等支援事業」(予算額22億円)が、こども宅食を「政策セカンドトラック」で実施する事業でした。

 

 フローレンス(こども宅食応援団)も中間支援法人として、頑張って全国のこども宅食団体に資金分配しました。その結果、たった2ヶ月で、50団体と連携して約10,000世帯に支援を届けることができました!

 

他にも、全国社会福祉協議会や、全国フードバンク推進協議会など5団体が中間支援法人として参画したので、通常の自治体経由の政策ファーストトラックより迅速に、より多くの世帯に支援を届けることができました。

 ただ、「ひとり親家庭等のこどもの食事等支援事業」は補正予算で緊急支援策として実施されたものなので、本年度以降実施される保証はなくて不安でした。でも、骨太に「政策セカンドトラック」に関する文言が盛り込まれたので、少しほっとしました。

 

 議員のみなさん、厚労省のみなさん、全国に「こども宅食」がより広がるように、恒久的に「政策セカンドトラック」でこども宅食事業を実施できるように今後ともご支援よろしくお願いします!

 

 なお、「政策セカンドトラック」は、こども宅食だけでなく、全国の困っている人たちに支援を届けなければいけない事業で活用できます。

 「トラック」を2本併設することで、自治体経由の政策ファーストトラックだけでは消化されず残ってしまう予算を有効活用できます。しかも!!うまく中間支援法人を活用すれば、資金だけでなく、先進的なノウハウや研修コンテンツも一緒に全国津々浦々に行き渡らせることができるのも大きなメリットです。

 

 国として、「政策セカンドトラック」をいろんな分野でうまく活用していってほしいです!

 

 

【DSW:デジタルソーシャルワーク】

妊娠・出産支援として、不妊症・不育症支援やデジタル相談の活用(SNSを活用したオンライン相談などアクセスしやすい妊産婦支援)を含む妊産婦支援・産後ケアの推進等に取り組むとともに、出産育児一時金の増額を始めとして、経済的負担の軽減についても議論を進める(P.13)

 

 僕らが必要性を訴えてきた「デジタル相談支援(デジタルソーシャルワーク)」に関する文言が入りました!

 

 フローレンスでは、こども宅食等を通じてつながったすべての子育て世帯に、オンラインでの相談支援(デジタルソーシャルワーク)を行っています。

 

 「デジタルソーシャルワーク」では、社会福祉士等の専門資格を有する支援員が、子育て世帯に対してオンラインで継続的に声かけを行います。ときには雑談したり、相談を受けたりしてゆるやかにつながり、支援情報を提供したり、必要に応じて行政や他機関・団体と連携して地域の支援につなげます。
※フローレンスは、2021年8月に神戸市と協力してLINE公式アカウント「おやこよりそいチャット神戸」、2022年4月に山形市からの受託事業として「おやこよりそいチャットやまがた」を開始。フローレンス独自に運営する「おやこよりそいチャット(全国)」と合わせて4000世帯以上に支援を提供しています。

 

 みなさん、親子を取り巻く社会課題として、自治体の窓口が利用されない、地域での支援者が慢性的に足りないため、支援や情報が必要な人に届かない「ラストワンマイル問題」があることを知っていますか?

 

 「自治体の窓口が利用されない」のは、周囲の目が気になる、平日窓口に行く余裕がない、支援情報がどこで得られるかわからない、といった社会にある様々な制約や障壁が存在するためです。

 

 ラストワンマイル問題を解決するためには、周囲の目を気にすることなく相談できたり、情報を得られる「デジタルソーシャルワーク」が有効です。さらに、「デジタルソーシャルワーク」の場合、全国の支援者がフルリモートで対応できるため、地域の支援者の不足問題も解消できます。

 

 まさに一石二鳥!

 

 今回の骨太で1点残念だったのは、「妊産婦支援」に限定されてしまったこと。妊産婦だけでなく、すべての子育て世帯にとって、デジタルソーシャルワークは有効です。

 

 議員のみなさん、厚労省のみなさん、全国すべての子育て世帯が、困ったときにオンラインで相談を気軽に受けられるように、デジタルソーシャルワークの事業化を是非お願いします!

 

 

【日本版DBS】

教育・保育施設等において働く際に性犯罪歴等についての証明を求める仕組み(日本版DBS)の導入」(P.13)

 

 フローレンスが訴え続けている「日本版DBS」に関しても、去年に引き続き載りました!
※日本版DBSについての詳しい説明は過去のブログ参照

 

 日本版DBSは、来年4月に発足する予定の「こども家庭庁」で制度化に向けた議論が進むことになっています。フローレンスとしても、引き続き動向を注視して、必要な提言をしていきます!

 

 

 

 コロナ対策、医療、雇用、教育など非常に多岐にわたる国の施策の中で、「骨太の方針」に入っているものは、それだけ国として重要視している施策であるということ。

 

 日本中の全ての家族の笑顔のために、フローレンスはこれからも全力で頑張りますので、引き続きご支援よろしくお願いします!!

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