【提言実現】「これで医ケア児の受け入れ先が増える」障害児施設における医療的ケア児用の基本報酬が新設!
2月4日に公表された「令和3年度障害福祉サービス等報酬改定案」に医ケア児用基本報酬の新設が盛り込まれましたっ!!
医ケア児家庭、そして医ケア児をお預かりする施設にとって、これはビッグニュースです!
【ずっと経営が苦しかった医ケア児施設】
たんの吸引や経管栄養などの医療的ケアが日常的に必要な子ども、いわゆる「医ケア児」は、医療の進歩などを背景に、ここ10年で約2倍増えて、現在全国に約2万人います。
2016年の児童福祉法の改正で、初めて医ケア児の支援のことが入ってから約4年。
その間、医ケア児を支援するための取組みは行われてきたものの、全く不十分。 医ケア児を預かるために必要なコストを賄うには到底足りない報酬設定で、僕らのような医ケア児施設を運営する事業者は経営が非常に苦しい状況が続きました。もちろん新規事業者もそうそう現れない。
このままでは、医ケア児の受け入れが全国で進まない・・・
なんとかこの状況を打開すべく、僕が毎回参加している永田町子ども未来会議などで、粘り強く「医ケア児を預かるために必要なコストを考慮した、医ケア児専用の基本報酬を新設してほしい!」と訴えてきました。
そして、ようやく今回の「令和3年度障害福祉サービス等報酬改定案」に盛り込まれたのです!
これはめちゃくちゃ嬉しいっ!
永田町子ども未来会議の荒井さとし議員をはじめとする国会議員のみなさん、厚生労働省のご担当者、そして、一緒に声を上げてくれた医ケア児家庭のみなさん、本当にありがとうございました!
これで、医ケア児を受け入れられる障害児通所施設が増えていくはず!と期待しています。
【今回の報酬改定のポイント(医ケア児関連)】
今回の報酬改定のキーワードは、「動ける医ケア児」。
今まで、障害児の分類は約半世紀前に作られた「大島分類」というものが使われていて、身体をコントロールする力(座位がとれる、立てるなど)と、知的能力がどの程度あるかという2つの軸によって、障害レベルが判定されてきました。
しかし、この分類だと、例えば、歩くことができて、知的な遅れもないけど、何らかの医療的ケアが必要な「動ける医ケア児」はどこにも分類することができません。
そういう事情もあって、これまで、「動ける医ケア児」1人当たりの基本報酬は、自閉症などの一般的な障害児と同じ830単位(9,296円/日)でした。
※1単位=11.2円(東京の場合)で計算
「動ける医ケア児」は、人工呼吸器を付けていれば、その管理が必要だし、動けるからこそ自分で人工呼吸器を外してしまうリスクもあって、見守りは必須。当然、人工呼吸器などの医療機器を扱える看護師の配置も必要になります。
なのに、一般的な障害児と同じ扱いなのは、どう考えてもおかしくない?
◼ポイント①:医療的ケアのスコア見直しと新たな「見守りスコア」の設定
そこで、今回の報酬改定では、医療的ケアの各項目の「基本スコア」が見直されるとともに、「見守りスコア」が新たに設定されました。「動ける医ケア児」を見守る大変さもちゃんと数値化しましょう、ということ。
これにより、例えば、人工呼吸器を付けて、胃ろうをしていて、人工呼吸器が外れてしまったら即対応を要する子の場合、以下のとおり、合計7点アップします。
《改定前》合計13点
人工呼吸器(基本スコア):8点
胃ろう(基本スコア):5点
《改定後》合計20点
人工呼吸器(基本スコア):10点
人工呼吸器(見守りスコア):2点
胃ろう(基本スコア):8点
◼ポイント②:必要な看護師配置が可能な「医ケア児用基本報酬」の新設
このスコアが関係するのが、今回やっと新設される医ケア児用の基本報酬。必要な数の看護師を配置できるように考えられた額になりました。
前述のとおり、改定前、「動ける医ケア児」1人当たりの基本報酬は、一律830単位(9,296円/日)でしたが、改定後は以下のとおり大幅アップすることに!!
・15点以下なら1,552単位(17,382円/日)《3:1》
・16~31点なら1,885単位(21,112円/日)《2:1》
・32点以上なら2,885単位(32,312円/日)《1:1》
※定員10人以下の施設(児童発達支援センター以外)の場合
※《》内は、この基本報酬を得るために必要な看護師配置 《看護師数:医ケア児数》
例えば、上記の「人工呼吸器を付けて、胃ろうをしていて、人工呼吸器が外れてしまったら即対応を要する子」の場合、合計20点なので、基本報酬は9,296円/日から21,112円/日にアップします。
これで、必要な人数の看護師を配置すると大赤字になってしまう問題が解消できて、本当に良かったです!
(ちなみに、改定前は、追加で看護師が必要な場合、基本報酬の830単位(9,296円/日)にプラスしてもらえる「看護職員加配加算」がありました。しかし、基本スコア8点以上の医ケア児が5人以上いるというレアケースでしか使えず、殆ど使われずに終わりました・・・)
さらに、少人数の医ケア児を預かる施設は、特に採算が取りづらいことを鑑みて、このスコアによらず、預かる医ケア児の人数や時間数に応じた「医療連携体制加算」が付くことになりました。
例えば、4時間以上医ケア児を1人のみ預かる場合、改定前は基本報酬の830単位(9,296円/日)のみでしたが、改定後は基本報酬885単位+医療連携体制加算1,600単位 (合計27,832円/日)が支払われることに。
これで、小さい施設を含め、多くの施設で医ケア児の受け入れが進むことが期待されます。
◼ポイント③:重症心身障害児施設の看護職員加配加算の要件緩和
重症心身障害児施設(重心施設)で、重症心身障害の医ケア児を預かる場合の看護職員加配加算の要件が緩和されました。改定前は、「基本スコア8点以上の医ケア児が5人以上」いることが要件でしたが、「その施設の全医ケア児の前年度1日当たりの合計スコアが40点以上」であればOKになりました。
例えば、5人定員の重心施設で、スコアが28点(人工呼吸器(12点)・気管切開(8点)・胃ろう(8点))の子が1日平均1.5人いれば、合計40点以上なので、看護職員加配加算が付きます。そして、その重心施設の医ケア児1人当たりの報酬は、基本報酬2,098単位+看護職員加配加算400単位(合計27,977円/日)となります。
【居宅訪問型保育事業にも医ケア児報酬を新設してください!】
今回の報酬改定の結果、既存の障害児通所施設の財務状況は改善し、新規事業者も参入できるようになるでしょう。
一方、2015年に開始された「子ども・子育て支援新制度」の地域型保育事業の1つである「居宅訪問型保育事業」で医ケア児をお預かりする場合、一般的な障害児と同じ額の加算(42,770円/月)しか付きません。
障害児通所施設と同様に、居宅訪問型保育も、医ケア児専用の報酬がないと、大赤字になるのは一緒です。フローレンスでは、都内で医ケア児を含む障害児用の居宅訪問型保育を提供していますが、毎月赤字続きで運営が非常に厳しいです。
内閣府、厚生労働省のみなさん、居宅訪問型保育事業にも医ケア児専用の基本報酬を新設するよう検討してください!
よろしくお願いしますっ!!