駒崎 弘樹 公式ブログ 提言・解説・アイディア

書評:「僕は君の「熱」に投資しよう」 〜悔しいぜ、俺だって圧倒的に挑戦し続けてやるんだからな〜

 

 

「悔しい」

 

僕はこの佐俣アンリさんの初の著作を読んで、正直そう思った。

 

なぜか、を話す前に、簡単に佐俣アンリさんと僕との関係を話そう。

 

G1アンダー40という、40歳以下のトップクラスの起業家・NPO経営者・政治家・官僚、研究者が集まる合宿型の会合で、最初に彼と出会った。

 

胸板が異様に厚くて格闘家みたいな風貌の人だったが、その装いと時折見せる人懐っこい笑顔のアンバランスが印象的だった。

 

彼はベンチャーキャピタリストと名乗ったのだが、奇妙な感覚を覚えた。
ベンチャーキャピタルといえば、シニアなおじさんが起業家に投資するのが一般的で、彼みたいな30になったかどうかの人がやってるなんてとても珍しかったから。

 

しかし後に知ることになるが、今や国内有数の300億円規模のファンドを運用する佐俣アンリさんは、まさに自分と同年代の若者たちに「賭け」、共に成長していくことで、日本を代表するトップベンチャーキャピタリストになっていったのだった。

【少年マンガのような、チャレンジジャンキー】

 

本書は、20代・30代の若い読者が想定されている。
なぜスタートアップする起業家が重要で、投資家とは何で、如何に若者が世界を変える可能性で溢れているのか、を佐俣アンリの半生を振り返りながら語っている。

 

そういう意味で僕は想定読者よりはだいぶ歳を取った起業家なのだけれど、
それでも十分に胸を熱くさせられるものがあった。

 

悔しくなるほどに。

 

それは彼が、誰よりも挑戦しているからだ。バカみたいに。

 

ドラゴンボールの世界を地でいき、(起業家との)友情と努力、そして勝利に向けて、めっぽう明るく、ひた走りに全力疾走してるのだ。

 

その人生の圧倒的密度。

 

テンションの強度。

 

読むこちらに問いかけてくるのだ。

 

「お前は、その程度の挑戦で良いのか」

 

「人類の年表を前に進めているのか」

 

と。

 

そして「くそう、俺だって負けねえぞ。誰よりも課題解決してやるさ!!」と怒鳴り返したくなる。

 

この本は、読みながら悔しくなって放り投げて早く仕事したくなる、そんな本なのだ。

【佐俣アンリで繋がるスタートアップとソーシャルセクター】

 

そして告白するが、僕は佐俣アンリが好きだ。

 

彼がフローレンスに寄付をしてくれているからではない。

 

彼が、僕たちを全力でリスペクトし、愛してくれ、応援してくれるからだ。

 

どういうことか。

 

普通の年長の投資家の人やベンチャーキャピタリストや証券会社の人たちと話していて、

僕がNPOで社会課題の解決をしている、と言うと「自分たちは無関係だ」と言う態度を、そこはかとなく、時にあからさまに出してこられる経験を何度かした。

 

興味を持ってもらえないならまだ良い。人によっては見下してくる方々もいた。「大金を動かす」ことに価値を置く方々にとって、人の命や生活に関わるけど、ささいな金しか生まない我々の仕事は、取るに足りないものに映るようだ。

 

しかし、佐俣アンリからは、一切そうしたことを感じることは無かった。それどころか、「起業家も社会起業家も課題解決をする人たちで、市場から収益を得られれば企業としてやれば良いし、得られなければNPOとして他の方法でマネタイズすれば良いし、本質的には一緒だと思うんですよね。僕は課題解決をする挑戦者をリスペクトしているんです」と会ってすぐに彼は言った。

 

嬉しかった。アンリさんのようなビジネスセクターとソーシャルセクターを、軽々と越境する投資家が出てきてくれたことが。

 

一昔前には崖のような断絶があった両セクターの溝がその辺のドブくらいのものになってきた、と信じられたのは、彼の存在があったからだ。そんなささいなことでとやかく言ってないで、とにかく起こそうぜ、イノベーションを、と言われているような気がした。

 

その時から、僕は自分が新たな社会事業を始める度に、アンリさんのところに言ってアドバイスと寄付という社会的投資を求めた。種銭がほしかっただけではない。彼という同志がほしかった。不安と恐れの海に出航する時に、彼というクルーが、同じ船の中で笑い合える仲間がほしかったのだ。

【最後に】

 

そろそろまとめよう。

 

あなたが今20代で将来ことをなしたいと思ったならば、本書を読んで後悔することはないだろう。

 

とにかく挑戦して挑戦して人生の最後に後悔なんて1ミリもしたくねえぜ、という年長の方も、この本を読んでほしい。もっとその想いはかき立てられるから。

 

アンリさん、魂のこもった本を、ありがとう。

 

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