「駒崎弘樹の社会起業道場」始めました
20代の頃、僕はほら穴みたいに孤独だった。
事業型NPOで起業したものの、目の前には道がなく、ただ鬱蒼と茂るいばらだらけの暗い森の中で、小さなナタだけ持って1日に1メートルずつ進むような日々だった。
NPO業界の先達に話を聞いても、君のようにチャラついて商売めかした人は好かんと言われ、ビジネス業界の先輩経営者には綺麗事は良いからと鼻で笑われた。
中間「支援」団体と言われる方々の中には、実践経験もないのに実践者に圧迫面接をかけるような類の方々が跋扈していて、支援なんてこりごりだ、と毒づいていた。
俺にはこの真っ暗な、棘だらけの森がお似合いで、全身血まみれになるからこそ、そして孤独と向き合うからこそじきに見えてくる地平線があるのだ、と言い聞かせていた。
確かに得るものはあった。
孤独と痛みに彩られた日々は、僕を強くした。
もう痛みを感じないほどに。
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今、40歳になった。若者であった時に這いつくばるように進んだ森を通り抜け、海にたどり着いた。
ここからは船に乗って、難破するかもしれないけれど多分あるだろう大陸を、何年か何十年かけて見つけにいかなくてはいけない。
しかし思うのは、これからこの森を通り抜ける若者たちに、僕と同じ思いをさせて良いのだろうか、ということだ。
「孤独に血だらけになるからこそ、見える景色があるんだ、若者よ。血を流せ」と言うことはできよう。
けれどそれは単なる生存バイアスだ。僕はたまたま蛇に噛まれたり、落雷に打たれたりしなかっただけ。僕がことさら優れていたわけでもない。
そして孤独も血も、成長の必要条件ではない。
味合わなくて良いものは、味合わなくて良い。
自分がもし運によって救われたのだとしたら、誰かの運を引き上げることで、運をくれた星に恩を返すこともできよう。
そうそう、孤独な日々の中で、自分の心を温めてくれるものがあった。
それは自分と同じように、茨の森を進む仲間たちの存在だった。
かものはしプロジェクトの村田さやかちゃん・青木けんたくん・本木くん。
カタリバの今村久美ちゃん。
キャンバスの石戸ななちゃん。
彼らとトラブルづくめの毎日を笑いあい、労苦を愚痴りあったことが、どれだけの救いだっただろうか。
あの頃の僕たちの関係は、さながら戦友と呼んで良いかもしれない。
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共感と経験に基づいて伴走してくれる、少し前を進む先輩。
競争とマウントはゴミ箱に入れて、痛みも苦しみも分かち合える戦友たち。
そうしたものを提供できる場を創ろう。
そう思った時に、ちょうど声がけしてくれたのがEtic.メイカーズプログラムさんだった。
メイカーズの参加者の若者たちを集めて、「駒崎弘樹の社会起業道場」(略称:駒崎道場)を開くことにした。
駒崎道場第一期の参加者は
虐待サバイバーにライティングの仕事を提供する(株)RASHISA 岡本翔さん。
困窮世帯の子どもたちにプログラミング教室を開催するNPO法人CLACKの平井大輝さん。
若者が社会課題にエンターテイメントで触れ合うことを目指す一般社団法人UMFの高村治輝さん。
足立区でこども宅食を立ち上げた栗野泰成さん。
気仙沼で新たな子育てシェアの仕組みを創ろうとしている、一般社団法人Omusubi の田中惇敏さん。
この青年たちのプレゼンを聴いた時。
そこには、荒削りながら、宝石のように輝く希望の欠片が見えた。
僕が彼らに伴奏し、彼ら同士が唯一無二の仲間となって、魔法瓶のように熱量を保持し付けるコミュニティが生まれたら、とても嬉しい。
今まで最前線で切り込み隊長をやってきたので、後進育成なんてガラじゃないかも知れないけれど。そしてこの試みもどうなるか分からないけれど。
でも孤独と痛みの連鎖は僕の代で止めないと、と思うので、とりあえずやってみることにする。