駒崎 弘樹 公式ブログ 事業ニュース

「医療的ケア児一斉休校に関する緊急全国アンケート」調査結果からわかった特有のニーズと必要なサポート

 私が理事を務めている、一般社団法人全国医療的ケア児者支援協議会では、政府の「一斉休校」要請後、医療的ケア児に対して初の全国調査を行い、当事者のニーズを可視化いたしましたので、ここにその結果をお伝えします。

 

 アンケートに協力くださった当事者の皆様、ありがとうございます!

 

 健常児で一斉休校の対象となったご家庭と比べ、「医療的ケア児」親子に特化した結果が明らかになりました。

 

 命に直結する問題の解決と、保護者と障害児が直面する精神的・肉体的負担の軽減が急がれます。

 

【アンケート結果サマリ】

・休校措置に対して、70.9%・107人の親が「とても困っている/困っている」(n=151)

 学齢期の医療的ケアが必要な子どもがいる家庭では「とても困っている/困っている」と回答した保護者が7割超。新型コロナウイルス対策に多くの企業が導入するリモートワークに関しても「医療的ケア児を抱えての在宅勤務は厳しい」との声が寄せられました。

 

・「臨時休校の影響として困っていること、心配なこと」は親子の生活負荷の増大(n=151)

 医療的ケア児は、痰の吸引や酸素吸入などの医療的ケアを必要とする障害児です。医療的ケアは保護者か医療従事者、特別な研修を受けた人にしかできません。医療的ケア児の世話を頼める人や日中の通所先が限られるため、親子の生活負荷が増大します。

 

 全国医療的ケア児者支援協議会の事務局運営を務める認定NPO法人フローレンスが2020年3月10日に発表した、主に全国健常児を子育て中の家庭を対象に調査した「一斉休校に関する緊急全国アンケート」では「家事や育児の負担増」に困っていると回答した保護者は46.1%であり、医療的ケア児家庭(62.3%)の負荷の高さが伺えます。

 

・「どんな支援があったら助かりますか」は、マスクやエタノールの提供と、訪問看護の長時間化(N=190)

 医療的ケア児のデイリーケアに欠かすことのできない物品が行き届きにくくなっています。

 

 一斉休校および新型コロナウィルス感染症の拡大にともない、医療的ケア児がいるご家庭からはマスク・エタノールの提供や、訪問看護の長時間化を求める声が多く集まりました。

 「感染予防のマスクや、気管切開しているので吸引時に使用する消毒液が手に入らない」、「3食の食事介助(1回に1時間半~2時間かかる)をしながら家事もしており、長期化すると大変」といった切実な意見も寄せられています。

 

新型コロナウィルス感染症の拡大および一斉休校で深刻化する医療的ケア児の問題

・医療的ケアが必要な子どもの世話を親戚や知人で代わることができず親の負担増

 医療的ケア児は、子どもだけで留守番をすることができません。一斉休校に伴い親は仕事を休まざるを得ず、所得が減り今後の生活に不安を抱えています。訪問看護の長時間化や頻回化など、専門職による在宅での支援が必要です。

・罹患すると重症化するリスクが高いため、通院などの送迎に公共交通機関を使う事が難しい

 感染リスクが高いとされる現在、罹患すると重症化する可能性が高い医療的ケア児は、公共交通機関を利用することができません。福祉車両での輸送サービスの実費負担は大きく、利用補助が必要です。

・消毒用エタノール、マスク等が不足し医療的ケア児家族が日常のケアを行えない

 医療的ケア児の日常のケアに痰の吸引があり、ケアのたびに手指や器具の消毒が必要です。エタノールが使用できなくなると、厚生労働省が定めるマニュアル通りのケアを実施することができません。

 

私たちが考える、行政・民間企業・社会に求める3つのサポート

1.医療的ケア児家庭に対し、自宅訪問型の支援を、①柔軟に、②利用者の負担を増やすことなく、できるようにしてください。

 「臨時休校の影響として困っていること、心配なこと」という質問に対して、お子さんの通う学校が休校になった当事者151名のうち62.3%にあたる94人が、「家事や育児の負担が増えること」と回答しています。

 24時間休みなく続く医療的ケア児のケア、家事・育児の負担を減らすために、訪問看護の長時間化や頻回化、居宅介護や移動支援の柔軟な運用、ベビーシッター利用支援事業の拡大などを通じて、柔軟に、かつ利用者の負担を増やすことなく、ご自宅での支援をできるようにしてください。

 

2.移動の際、福祉車両を利用出来るように、補助を増やしてください。

 感染リスクが高いとされる現在、罹患すると重症化する可能性が高い医療的ケア児は、公共交通機関を利用することができません。

 障害児通所支援サービスの送迎も受け入れに制限があり、結果として医療的ケア児は障害児通所支援サービスを利用できないことがあります。福祉車両による輸送サービスの利用補助を増やしてください。

 

3.エタノールやマスクが医療的ケア児の家庭に行き届くようにしてください。

 「どんな支援があったら助かりますか」という質問に対して、回答者190名のうち60.5%にあたる115人が、「マスクやエタノールの提供」と回答しています。

 手指やカニューレなどの消毒にエタノールは欠かせず、頻回に通院する医療的ケア児には感染リスクを低減するためのマスクが欠かせません。医療的ケア児とその家族にエタノールやマスクが行き届くよう、ご支援をお願い致します。

 


アンケート概要

実施期間:3月6日(金)18:00~3月10日(火)24:00まで

対象:全国の医療的ケア児の保護者 ※未就学児の保護者も含む

回答総数:196 

有効回答(医療的ケア児の保護者)数:190

※ うち、お子さんの通う学校が休校になった保護者:151   

 

詳しい調査結果はこちらをご覧ください。

 

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