食品を届けるプロセスが、地域の就労訓練に。文京区で生まれた支援の輪
文京区の経済的に厳しい状況にある家庭に、寄付で募った食品を届けるこども宅食。昨年2月の配送では、配送する食品の一つとしてレーズンをお届けしました。
このレーズンをご寄付いただいたのは、エム・シー・フーズ株式会社(以下、MCF株式会社)。
食品を寄付していただけることも、とても素晴らしいことですが、実は今回、単なる寄付にとどまらない、食品寄付を通した新しい地域とのつながりが生まれました。
MCF株式会社が、文京区内にある障害がある方の就労支援施設であるふる里学舎本郷に、レーズンの袋詰め作業を委託することで、こども宅食の食品寄付と配送のプロセスが就労訓練になる、という循環が生まれたのです。
MCF株式会社とふる里学舎のご担当者さまに、こども宅食への思いと、袋詰め作業を委託することになった背景について聞きました。
袋詰め作業を文京区内に委託。地域に良い循環を
MCF株式会社は、ジュースの原料となる果汁やお茶、ドライフルーツなどを調達・販売している会社。こども宅食には、スタート当初から、毎回、紅茶などのご寄付をいただいていました。
こども宅食が、栄養価の高い食品もお届けしていきたいと相談したところ、その思いに応えてくださり、レーズンをご寄付いただけることになりました。
一点課題となったのが、そのレーズンが業務用大袋であること。MCF株式会社は、食品メーカーや食材専門商社への卸売りがメインなので「1箱13kg」などの小分けされていない商品しかなかったのです。
こども宅食に寄付するためには、各ご家庭が受け取れるように、大袋に入ったレーズンを小分けにして袋詰めする作業が必要。
MCF株式会社はここで寄付を断念することなく、こども宅食とともに、文京区内で新たな委託先を開拓。
そこには「こども宅食に賛同してくれるところに委託したい」「文京区の就労支援につなげ、地域によい循環を生みたい」という思いがありました。
こども宅食への寄付が就労訓練につながる
そんな思いを背景に、MCF株式会社とこども宅食が委託先として選んだのが、ふる里学舎本郷です。
ふる里学舎本郷は、障害などの理由で働くことが難しい方に対し、働くための知識や能力を高めるための訓練を行う就労支援サービスを行っています。
障害のある方々が、就労支援訓練の中でシール貼りや資料の封入、食品の製造等を行い、その作業料を受け取るという仕組みになっており、働く習慣やスキルが身につけば、次のステップとして就職を目指していきます。
今回、MCF株式会社がふる里学舎へ袋詰め作業を委託したことで、経済的に厳しい家庭の支援に加えて、同じ文京区の就労支援の分野でも新たな価値を生み出すことになりました。
障害がある方々の「誰かの役に立ちたい」という思いに応える
ふる里学舎本郷は、昨年6月にオープンした新しい施設ということもあり、障害がある方々のために何か機会を提供できないかを模索している最中でした。
そこに、今回の取り組みにおけるレーズンの袋詰め作業の依頼がありました。
依頼を受けたふる里学舎本郷は「文京区に貢献したいのはもちろん、何よりもふる里学舎で就労支援を受けている障害がある方々のために作業を引き受けたい」そんな思いから、袋詰め作業を担当いただけることになりました。
スタッフさんいわく、ふる里学舎で就労訓練を受けている障害がある方の多くが、働くことを通じて、人や社会の役に立ちたい思いがあるといいます。
「こども宅食を通じて「障害がある」という理由だけで、いつも守られる立場に置かれるのではなく、誰かの役に立てる、という実感を得てほしい」そんなふる里学舎の背景もあったのです。
就労支援の中で自分たちが担当した作業が、こども宅食の流れの中で、巡り巡って同じ地域の家族の役に立つ。
ふる里学舎による袋詰め作業の受託は、就労訓練だけでなく「人や社会の役に立ちたい」という思いにも応えられるものでした。
これは、私たちこども宅食事務局の想像を上回る、とても嬉しい波及効果でした。
たくさんの方の思いを乗せて
ふる里学舎本郷の袋詰め作業が終わり、無事に迎えたこども宅食の配送日。
ボランティアの皆さんとスタッフの元に、150世帯分のレーズンが届きました。
両手いっぱいの量のレーズンを、ボランティアの皆さんが一つひとつ丁寧に箱詰めしてくれました。
ボランティアの皆さんは「自らがひとり親家庭で育った」「子どもたちが喜ぶ顔を思い浮かべながら、作業をしている」など、いろいろな思いを持って集まっている方々ばかりです。
エム・シー・フーズのご厚意からはじまった寄付が、ふる里学舎本郷で障害がある方々の就労支援となり、ボランティアさんが家庭に向けて食品を箱詰めする……。
このように多くの方の思いが積み重なって運営されているのが、こども宅食です。
こども宅食をお届けした家庭からは、「毎回、こども宅食が届くことで、お母さん自身が元気をもらっている」「箱を開けるのが楽しみ」などの声が届いています。
引き続き、食品を届けるだけに留まらず、人のぬくもりを届けられるような事業にしていきます。
「こども宅食」では、引き続きご寄付やボランティアを募集しています。
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