駒崎 弘樹 公式ブログ 事業ニュース

障害児保育から、認可保育所に転園できることってあるの?―もう一つの「卒園」

 春は保育園や幼稚園の卒園の季節。フローレンスが運営する障害児保育園ヘレンや障害児訪問保育アニーでも、卒園式が行われました。

 就学の年齢となり、ヘレンやアニーを巣立っていく子どもたちの姿に、親御さんや現場の保育スタッフ、さらには事務局スタッフまで涙、涙となることも少なくありません。

 そんなヘレンやアニーですが、実は、年長さんが学校に進学する以外にも「もうひとつの卒園」があります。

 それは、お子さんが、それまで通うことができなかった、認可保育所などへ転園すること。

 この2018年3月にも、そんな「もうひとつの卒園」を迎えた子どもたちがいます。

 

認可保育所に通えるようになった子どもたち

 障害児保育園ヘレンや障害児訪問保育アニーでお預かりするのは、さまざまな障害や疾患により、通常の保育園に通うことが難しいお子さんたち。

 特に、たんの吸引や経管栄養(鼻やお腹から胃にチューブを入れ、そこから栄養を摂る)といった医療的ケアの必要なお子さん(医療的ケア児)は、知的障害や身体障害がなくても、看護師などのケアの担い手がいないという理由で、通常の保育園に通うことができないケースが多くあります。

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経管栄養(チューブから食事を摂る)の様子

 今回転園となったのは、そういった医療的ケア児の子どもたちです。いったいどんな理由で転園できるようになったのでしょうか?

 

医療的ケアが必要なくなったお子さん

 ひとつは、ヘレンやアニーで保育を受け、「子どもは子どものなかで育つ」環境で日々過ごすことによって、心身の発達が促され、医療的ケアが必要なくなるというものです。

 

■はるた君(障害児保育園ヘレンすがも)

 はるた君(仮名)は酸素吸入の医療的ケアがなくなり、認可保育所に転園となりました。

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 ヘレンすがもは、同じ建物にがおうち保育園すがも(フローレンスが運営する小規模認可保育所)があり、子どもたちが交流するインクルーシブ保育の環境であることも大きく影響しています。

※インクルーシブ保育…障害の有無にかかわらず、どのような背景を持つ子どもであっても、わけへだてなく一緒に保育すること。インクルーシブは「包括的な、包み込む」という意味

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ヘレンすがもとおうち保育園すがもの交流保育の様子

<参考記事>

「おうち保育園すがも」&「ヘレンすがも」インクルーシブ保育の最前線がここに!?

 

■こうたろう君(障害児保育園ヘレン荻窪)

こうたろう君(仮名)はもともと、経管栄養(鼻やお腹から胃にチューブを通し、直接栄養を送ること)の医療的ケアがありました。しかし、荻窪園で同じ園の子ども達や、保育スタッフ、看護師などと一緒に日々の生活をおくる中で、経管栄養が必要なくなり、認可保育所に転園できることになりました。

<参考記事>

https://florence.or.jp/news/2017/06/18412/

 

■ももかちゃん(障害児訪問保育アニー)

 ももかちゃん(仮名)は、1歳半でアニーに入園。アニーを利用し始めた頃は、酸素吸入が必要でした。

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 アニーの保育を2年間受ける中で必要なくなり、このたび認可保育所に転園となりました。

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■はるかちゃん(障害児訪問保育アニー)

 はるかちゃん(仮名)も、ももかちゃんと同じように、酸素吸入が不要となり、この4月から認可保育所に転園となりました。

 

認可保育所が医療的ケア児の受け入れが可能になったお子さん

 先ほども説明したとおり、通常、医療的ケアが必要な子どもは、通常の認可保育所では受け入れが難しいと言われることが多いのですが、なんと今回、自治体が医療的ケアを受け入れてくれたケースがあり、転園することができたお子さんがいます。

 

■さきなちゃん(障害児保育園ヘレン荻窪)

 さきなちゃんは気管切開の医療的ケアがあります。これまではヘレンで看護スタッフのサポートの中で保育を受けていました。

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 それがこのたび、通常の認可保育所に通園できることになり、ヘレンから転園できることになりました。

 もともと保育園に勤務していた看護師が医療的ケアに対応できるようにする、また看護師の在園時間帯をさきなちゃんの在園時間と調整する、といったことを自治体が手配してくれたのだそうです。

 これはとても革新的なことです。他にも同じような自治体が増えれば、医療的ケア児も普通に保育園に通えるようになっていくでしょう。

 

ひとりひとりのお子さんに寄り添う保育

 ヘレン・アニーのお子さんで、認可保育所などに転園できることになったのは、合計で5名(ヘレン3名、アニー2名)。とても喜ばしいことです。

 でも、ヘレンやアニーは必ずしも「医療的ケアをなくす」ことが目的ではありません

 保育スタッフや看護師、リハビリスタッフが大切にしているのは、障害や医療的ケアのある子どもの日々の生活に寄り添い、子ども同士の触れ合いを通して、ひとりひとりの子どもの世界が豊かになるようにすること。

 医療的ケアがなくなったというのは、そういった現場スタッフの想いのこもった保育の営みが、子ども達によい影響を与え、目に見えるかたちになったひとつの事例と言えるのではないでしょうか。

 これからもフローレンスは障害児保育園ヘレン、障害児訪問保育アニーでの保育を通して、障害や医療的ケアのある子どもとその家族を支えていきます。

 そんなヘレン、アニーの現場で子どもたちに寄り添う保育スタッフを募集しています。興味のある方はぜひ説明会にご来場ください。

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