駒崎 弘樹 公式ブログ 提言・解説・アイディア

小池知事が「子どもを受動喫煙から守る条例」を公約に入れたことの意義は何か

pixta_26664311_M.jpg
 「#たばこ煙害死をなくそう」ムーブメント呼びかけ人の一人、駒崎です。
 屋内禁煙を実現しようとする厚労省を、茂木議員・野田毅議員を中心とする自民党たばこ議連が阻んでいる、という構図が続いています。
厚労相 飲食店の原則禁煙 自民案では受動喫煙防げず NHK  5月26日
 世論の高まりを受けて、官邸も事態収拾に向けて、指示を出し始めています。
 そんな中、小池知事から驚きの発表がされました。

【子ども目線のたばこ対策】
 小池都知事は以前から、厚労省案に近い、屋内禁煙条例を作っていくことを発言していました。もし自民党たばこ議連が厚労省案を潰したとしても、都議会議員選挙で都民ファーストが勝利すれば、東京においては屋内禁煙が実現することになります。
 それに加えて、今回発表されたのが、「子どもを受動喫煙から守る条例」です。
都議選:都民フが公約に子ども受動喫煙防止 条例化掲げる 毎日新聞 
 これは非常に画期的なことで、「家庭内や公園や通学路、子どもが同乗する自動車の中などで喫煙を制限」という点で、今回厚労省が提案した屋内禁煙案を更に進めるものとなっています。

【なぜ、こどものためのたばこ対策が必要か】
 受動喫煙は子どもの突然死の確率を4.7倍にも高めます。(日本循環器学会 http://www.j-circ.or.jp/kinen/iryokankei/eikyo.htm
 
img_eikyo_4_large.gif
(画像は日本循環器学会のWEBより引用)
 更には喘息による入院率も1.43倍~1.72倍に引き上げます。
スクリーンショット 2017-03-19 15.27.56.png
 また、意外かもしれませんが、知能にも負の影響を与えます。特に読解能力に大きく悪い影響があります。
 つまり、実際に心身に大きなダメージを与えることにより、受動喫煙を強いることは、児童虐待とみなすべきことなのです。
 大人であれば、受動喫煙を強いられている状況に、「すいません、やめて下さい」と伝えられるでしょう。
 しかし、子どもは生まれる家庭を選べず、また親に対しても受動喫煙を望まないことを伝えられません。
 これが、子どものための受動喫煙対策が必要な理由です。


【諸外国の子どものための受動喫煙対策】
 イギリスでは、子どもが車内にいる場合にたばこを吸うことは犯罪です。
 オーストラリアでは車内も規制されていますが、多くの州で子どもの遊具がある公園等から10メートル以内も禁煙になっています。
 アメリカでも多くの州や地域で、子どもに関する施設内やアクセス可能な公園等において規制を行なっています。
 このように、世界各国で子どもの前での喫煙を暴力であるとみなし、法規制を行なっているのです。
 実際に、スコットランドでは、法規制によって小児喘息入院数が減った等、良い影響が見られました。
 
スクリーンショット 2017-03-19 16.03.22.png
【私的権利を侵害している?】
 このような子どものための受動喫煙対策ですが、ネット上には以下のような反応があります。
スクリーンショット 2017-05-27 17.23.01.png
スクリーンショット 2017-05-27 17.28.48.png
 果たして本当にそうでしょうか。
 僕はこう考えます。
 突然死の確率が5倍になる等、子どもの前での喫煙は暴力的で、児童虐待と同じだということは述べました。
 児童虐待が家の中で行われた場合、「家の中は私的な空間で、私的な空間に政府が口を出すべきではない」ということにはなりません。
 なぜなら、子どもは親の私的な持ち物ではなく、一個の人格であり、生きる権利、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を持つからです。
 よって、車内や家庭において、子どもの前での喫煙(暴力)を一定制限されたとしても、そこに正統性はあると言えるでしょう。

【子ども達のために】
 今回の東京都の発表は、先進国で最も遅れていると言って良い日本の受動喫煙対策を、10年ほど前に進めるものです。諸外国では当然の規制ですが、公共の場(飲食店等)に限った厚労省案でさえ潰されようとしている日本においては、異例と言って良いでしょう。
 おそらく愛煙家や、子どもの前での喫煙を児童虐待だと認識していない人たちからの、多くの批判が集まると思います。
 しかし、選挙戦を有利に進める戦術、という側面はあったとしても、子ども達のためにリーダーシップを発揮しようとしている知事の姿勢に、まず拍手を送りたいと思います。
 そして我々都民は、子ども達に対して受動喫煙という暴力をふるい続けたいか、ということを議論していかなくてはならないでしょう。

HOMEブログトップへ