駒崎 弘樹 公式ブログ 提言・解説・アイディア

母の日に、先進国で最も貧困率の高い日本のシングルマザーを思う

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 主にシングルマザーに、寄付を原資に格安の病児保育を提供しているフローレンスの駒崎です。
 今日は母の日ということで、ある母親のことを紹介します。仮にヒトミさんとしましょう。
【シングルマザーの日常】
 ヒトミさんは結婚して出産後、夫のDVに耐えかねて、家を出ました。
 住み慣れた家を出て、全く知らない土地で子どもを連れて生活を立て直すのは、本当に大変でした。実家とも疎遠で、戻れる状況にはありません。
 政府からの手当て(児童扶養手当)も、ごくわずか。当然養育費の支払いもありません。
 子どもを連れての就職活動の面接では
 「保育園のお迎えで、残業できない?いやー、それじゃあ無理だ」
 「子どもが熱出したりしたら、すぐ休むんでしょ?シフトに穴開けられるのは、困るんですよ」
 こんな風に言われ、なかなか正社員の仕事には合格しません。
 時給950円の非正規の仕事にはありつけましたが、これではなかなか生活していけません。よって、夜間と土日のパートを掛け持つことにしました。帰りは20時を過ぎ、子どもはいつも保育園では一番最後のお迎えです。
 保育園の先生から、「たまにはゆっくりお子さんと過ごされてくださいね」と言われ、帰り道にぐしゅぐしゅに泣いたそうです。
 この先、自分の人生がどうなっていくか、不安に押しつぶされそうです。でも、子どもだけは、何とか幸せになってもらいたい。だから、やれるところまで頑張る。そう強く思っています。


【日本のひとり親の貧困率は、先進国最悪】
 このヒトミさんの話は、僕が今まで出会ったたくさんのシングルマザーから聞いた話の中で、「よくある」部分を繋ぎ合わせたものです。
 つまり、ヒトミさんの話は、何万、何十万といるシングルマザーたちの、珍しくもないストーリーです。
 統計はそれを示しています。
 ひとり親の54%は貧困状態。
 就労年収200万円以下が6割。

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 先進国の中では、最悪の貧困率。
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 当然その子どもたちも貧困に。
 今や6人に1人の子どもたちが貧困ライン以下の生活をしています。
 にもかかわらず、養育費の支払い率はたった2割

【よくある、そしてなくならない反論】
こういう話をすると、よく返ってくる典型的な反応は以下のようなものです。
「好きで別れたんだから、自己責任だよね」
「一生懸命働けば、さすがに生活していけるでしょ」
「相対貧困っていっても、途上国と違って飢え死にするわけじゃないんだから」
「俺の知り合いのシングルマザーは、ブランドのバッグ持ってるよ」
 好きで別れたから自己責任ということですが、誰も別れるつもりで結婚していません。
 DV等のケースで事前に気づくことは、非常に難しいのです。
 一生懸命働いても、非正規雇用で、かつ完全ワンオペで子どもを育てる、というのはものすごい負担です。
 よく「相対貧困率は指標として意味ない」というような方が、(相対はゼロにならないから)いますが、日本の相対貧困ライン以下の生活は、子どもの学用品が買えなかったり、医者に通うことを躊躇したり、給食が最も栄養が豊富な食事だったりするようなレベルです。
 飢え死にしなければ貧困じゃない、というのはあまりにも他者への共感性が薄くはないでしょうか。
 そして、シングルマザーがブランド品を持っていたりすると、偽貧困だとバッシングをしたがる人もいます。中にはスマホを持っているだけで、「支援に値しない」と決めつける人もいます。
 生活が苦しくなる前にバッグを買ったのかも知れません。模造品なのかもしれません。いずれにせよ、ボロボロの服を着て物乞いをしていなければ、まるで貧困ではないかのような言説は、社会の貧困を悪化させることはあれ、改善することには繋がらないでしょう。
【お願い】
 みなさんに、ご自身の妻に、母に感謝しながらも、ふと足を止めて、厳しい立場で生活をしている母たちにも、思いを向けてもらえたら。
 もし可能なら、シングルマザーを支援する社会福祉団体に寄付やボランティアをしていただけたら。
 もし周りにシングルマザーたちがいたら、友人の輪に迎えてもらえたら。かといって同情からではなく、共感と友情とともに
 もしシングルマザーが面接に来たら、子どもがいることで採用を躊躇しないでください。ベビーシッターや病児保育等、適切なサポートがあれば、彼女たちは職場に大きく貢献してくれるでしょう。
 もし選挙があったら、シングルマザー達のことを触れた政策を掲げる政治家達を選んでください。
 シングルマザーにとって住みやすい社会は、シングルファザーにとっても、夫はいても孤育てしている母にとっても、他の経済的に厳しい家族にとっても、住みやすい社会でしょう。
 母の日に、全ての母親達に幸多からんことを。

参考支援情報:

・しんぐるまざぁずふぉーらむ
 シングルマザーの方々の互助支援組織。全国にネットワークがあります。
・よりそいホットライン
 24時間通話無料で、生活相談ができます。
・東京都ひとり親家庭支援センター 「はあと」
 東京都におけるひとり親支援の総合窓口的存在です。
*ひとり親支援のため、フローレンスは寄付を集めています
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