駒崎 弘樹 公式ブログ
提言・解説・アイディア
「保育園落ちた日本死ね」と叫んだ人に伝えたい、保育園が増えない理由
こんばんは、都内で13園の小規模認可保育所を経営する、中小企業のおっさんの駒崎です。
今日は、ネット上でバズっている魂の叫びに、保育園現場から、また政府の審議会委員の立場から答えたいと思います。
【魂の叫び「保育園落ちた日本死ね!!!」】
ある保育園入園審査に落ちた方の、ネット上の魂の叫びが、さざ波のように広がっています。
「保育園落ちた日本死ね!!!」
分かる、分かるよ。何が一億総活躍社会だよ、と。私活躍できないじゃん、と。その通り。
じゃあ、政府は何もしていないのか?
【実は保育所数は劇的に増えてるけど、待機児童は減ってない】
20年くらい前から少子化懸念が高まって、政府は待機児童対策をしてきましたが、あまりお金は使ってきませんでした。
遅きに失した感はありますが、ようやく消費税増税の一部を使う、という財源のメドをつけて、昨年4月から「子ども子育て新制度」という待機児童問題にガチで取り組みますよ、という方策を打ち出しました。
(実際は新制度を見越して、1年前倒しで、園づくりを加速させました。)
(内閣府子ども子育て会議資料より)
ということもあって、平成25年度あたりからグンと保育の拡大量が伸びました。
しかし、認可保育所に申し込む人が増えたこともあり、待機児童は減らせず、むしろ若干増えている、という状況なのです。
(内閣府子ども子育て会議資料より)
この2月の入園結果は、まだ統計には組み入れられていないので、確たることは言えないのですが、おそらく今年も状況は昨年と似たようなものではないか、と想定されます。
【もっと保育所つくって、待機児童減らせば良いじゃん?】
ここで疑問を持つ人も多いでしょう。認可保育所に申し込む人が多かろうが、それ以上に保育所つくれば良いじゃんか、と。
その通りです。しかし、そんなに機動的に保育所をつくれない、3つの要因があります。
①予算の壁
②自治体の壁
③物件の壁
【予算の壁】
待機児童の多い都市部においては保育士不足です。これによって、開園に大きくブレーキがかかります。
保育所は一人でも保育士が欠けたら、法令違反で開園できません。よって、「保育士を採用できた数」が開園数上限になります。
保育士不足は保育士の処遇が低いことが要因です。
保育士給与は全国平均で月20.7万円。(出典: http://bit.ly/1HwTytD )
全産業平均と比較して、月額10万円程度低い。
しかし、政府はこの保育士の処遇改善の予算をわずかしか取っていません。
月額1万円を上げるのに340億円、全産業平均値まで上げるのに3400億円を予算として積みませば、保育士処遇は改善し、開園スピードは大きく早まります。
【自治体の壁】
自治体がブレーキ役になっています。パン屋であれば、好きな場所に何軒でもつくれます。
しかし、保育所は認可制になっており、自治体が計画を立てているので、
「このエリアとこのエリアに2箇所ずつ作る予定なので、他の場所につくってもらっちゃ困ります」
ということを言ってくるわけです。
(参照:待機児童増加の、意外な犯人は http://bit.ly/1M6kXyN )
また、自治体が独自の無意味なルールを勝手につくって、それが参入障壁を上げています。
例えば杉並区は、小規模認可の園長基準に「6年間『継続して』保育業務に携わった経験」を求めています。半年でも業務を離れたらアウト。育休も取れないことになり、馬鹿げています。
なぜこうした事態が起きるかと言うと、待機児童の常態化によって、「待機児童が解消できなくても、担当者の評価はマイナスにならない」ためです。一方で、保育所で事故や突然の事業者撤退があり問題になると、評価に大きく影響します。
すなわち、自治体(と担当職員)からすると、園を増やそうというインセンティブよりも、間違いのない事業者を選別する方が強い動機となり、参入を抑制するのです。
【物件の壁】
保育所は二方向避難路の確保や新耐震基準を満たしているなど、安全に運営するために必要な要件がどうしても多くなります。それを満たしていて、かつ周辺住民が文句を言わず、かつ保育所としてペイする坪単価で、駅からの距離がそこまで遠くない物件というのは、非常に限りがあります。
【では、どうする?】
怒りましょう。僕たちは怒って良い。予算配分は不当だし、このままだと少子化も進行し社会保障も危
機になり、それは将来、可愛い我が子たちの生活を直撃するでしょう。
機になり、それは将来、可愛い我が子たちの生活を直撃するでしょう。
そして怒りを原動力に、行動しましょう。
まず、政府に対しては、保育士給与引き上げのための、予算増額の世論を高めることです。
ちなみに「保育園落ちた日本死ね」の中で、「国会議員を半分にしろ」という提言(?)がありましたが、残念ながらそんなことをしてもスズメの涙のお金しか出てきません。
(議員1人あたり給与と手当がざっくり4400万/年で、717人いる国会議員を半分の358人にすると、浮く税金は158億円。桁が違います。)
そうではなく、高齢者1000万人に3万円配ること(つまりは3600億円)をポンと決めちゃえるわけなので、出そうと思えば出せるのです。投票率が低いから、我々子育て世代の優先順位が、低いだけです。
声をあげて、世論の波をつくるのです。
メディアにお勤めの方は、工作員となってこの話題をニュースにあげましょう。友達に国会議員やその関係者がいる人は、臆せず文句を言いましょう。そうじゃない人は、SNSでとにかく拡散させましょう。ベッキーで騒いでる場合じゃないんです。
また、自治体に対しては、とにかく文句を言うべきです。
自治体の職員は、待機児童を解消できなくてもクビにはならないので、騒いでも効かないですが、市民の怒りを買って職を失う人たちはいます。
それが、首長(市長や区長)と地方議員です。
彼らに対し騒ぐのです。声を届けるのです。
数年前の「杉並保育園一揆」では、ママたちがベビーカーで区役所前でデモをして、その絵が面白いこともありメディアが食いつき大炎上。杉並区の認可保育園増設を大きく加速させました。
「保育園落ちた日本死ね」と叫んだ名も無きあなた、見てますか。僕も心はあなたと共にあります。あなたがネットで叫んだように、それをネットでも、リアルでも、あなたと共に何万人がやっていって、無関心な政治をこちらに向かせるしかありません。でないと本当に、日本は緩慢に死んでいくことになってしまうだろうから。
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