駒崎 弘樹 公式ブログ
事業ニュース
「子どもを他人に託す親はダメな親」なのか
このプロジェクトを立ち上げてから1週間が過ぎました。早くも2,300万円以上のご寄付と温かい応援の声をいただき、ありがとうございます。プロジェクトについて知ってくださる方が増えるにつれて、事業やその背後にある課題についてご質問をいただくことが多くなりましたので、ぜひご質問にお答えしていきたいと思います。
———-Q:「どんな環境に授かった子どもであっても、手放すようなことがあってはいけないと思う。子どもを他人にあげるのは、親としてはやっぱりダメではないか。そういう親を出さないようにするべきでは。」———-
この質問に直接お答えするために、一つのエピソードを紹介させてください。赤ちゃん縁組事業を立ち上げる決意をする前、僕は、望まない妊娠をした女性向けの滞在施設を訪れました。その時にお話をきかせてくださったのは、関西地方出身の20代の妊婦さん。
「私は父親と9歳で死別し、母親は蒸発しました。その後親戚に引き取られたのですが、カップラーメンしか食べさせてもらえなかったり、叔父から身体的に虐待され、中学生の頃に何度か自殺未遂をし、17歳まで病院に入院することになりました。その後、高校は通信制で1年勉強しましたが、1人で食べていかなければいけなかったので辞めました。だから、中卒です。
精神病院から退院して、親戚からも絶縁されていたので、ファーストフード店で働いたのですが、十分な生活ができるほどは稼げませんし、体がついていきませんでした。もっと短時間で稼がなくては、とキャバクラで働き始めたのですが、お酒を飲まなくてはいけない仕事で体を壊しました。お酒を飲まずに、短時間で稼げるといったら、風俗になります。最初は軽めのものから始めたのですが、いつの間にかハードな仕事を受けざるを得なくなってしまいました。
ただ、生活は安定し始め、ちょっとですが貯金もできるようになってきました。その矢先、仕事からの帰り道、歩いていたら突然車の中に押込められて、薬をかがされ、そのまま拉致されました。気づいたら明け方のコンビニの前に捨てられていました。集団でレイプされたようです。
精神的に警察に行ける状況ではありませんでしたし、行って根掘り葉掘り聞かれるのも嫌でした。事件直後に、産婦人科に行ってアフターピル等も処方してもらったのですが、それが効かなかったようで、妊娠しました。気づいた時にはぎりぎり法的には中絶しても良い期間だったのですが、地元ではやってくれる病院はありませんでした。
かといって、他県に行って手術を受けるお金もない。仕事も休んでいると収入も入ってこず、どんどん追いつめられてきました。そんな時に、ネットで検索して、ここに辿り着きました。」
市役所や行政には相談しなかったのですか?と聞くと
「役所に相談すると、児童相談所を紹介されましたが、児童相談所は産んだ後に対応してくれるということでした。病院と役所から『すぐ警察に行ってくれないと困る』と言われて、不信感を持って、そのまま足が遠のきました。」
という答えが返って来ました。
「ここに来なかったらどうしていたと思いますか?」と聞くと、彼女は顔を伏せながら、「分かりません。一生懸命流産する方法を考えたと思います。あと多分、家で1人で産んで、その後捨ててたかも知れません。ひどいですよね。分かっています。でもどうしようもできなかったんです。」とリストカットでギザギザになっている腕をなでながら言いました。
本当は全ての子どもたちが健やかに育つことができる環境に産まれてくるのが望ましいですが、残念ながらそうとは限りません。中にはこの女性のように、経済的に厳しい状況であったり、性的暴行による妊娠だったりすることもあります。精神疾患を患っているケースもあります。
「子どもを育てられないのに授かったのは親の責任」というのは簡単ですが、過酷な環境で育てられ、虐待され、最悪の場合は死に至るのは無力な子どもです。僕たちは、すべての子どもたちが愛情あふれる家庭で健やかに育つ社会を作りたいと思います。
ぜひ、引き続き皆さんのお力を貸していただけると嬉しいです。このプロジェクトのシェアやリツイート、そして、ご支援をよろしくお願いします。
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