駒崎 弘樹 公式ブログ 旧ブログ記事

「経営者が教える『本当は他社には教えたくない、ワークライフバランスで得する方法』」4(最終回)


「ろうさい」連載コラムを転載。



●前回までのあらすじ

前回までのあらすじを3行で表すと
「ド中小企業の我々が、働き方をカイゼンしたら、儲かった」
「会議ルールやメンバーの見える化を行ったら会議時間が超短縮された」
「在宅勤務やワークシェアを入れたら残業レスな職場が実現された」
です。
今日は最終回ということで、生産性を高める活動と共にやらなくてはいけないことをお話ししましょう。

●効率を極限まで追求すると、みんな黙る

これまでトヨタ並のカイゼン活動を繰り広げていった結果、我々のような中小企業でも、残業時間を激減させ、コスト削減効果を得られ増益へと繋がっていったのでしたが、思わぬ副作用も出てき始めました。
それが「殺伐感」です。生産性を高め一心不乱に自分の作業に向かうことによって、確かに集中しやすく、かつ生産性は高まったのですが、その分周囲の人との軽い世間話やコミュニケーションが削げ落ちていきました。
するとオフィスはシーンとしたまま、キーボードを叩く音だけが鳴り響くような状態になります。するとコミュニケーションを取らないことによる様々な誤解、行き違い、すれ違いが生まれだし、雰囲気が悪くなっていったのでした。

●コミュニケーション活性化策①「環境整備

これはイカン、とコミュニケーション活性化策を打っていくことになりました。まずは「環境整備」と名付けられた、「掃除」時間。朝の10時から全社員一斉で15分間、黙々と掃除します。
環境整備.jpg
掃除がなぜコミュニケーションなんだ?と思われる方もいるかも知れませんが、これが立派な潤滑油の効果を果たします。
掃除と一言で言っても、それは「整理」「整頓」「清掃」という工程で成り立ちます。掃除機かけたり水拭きしたりするためには、机の上や雑多に積んであるものを整理整頓しなくてはいけないわけです。
この整理整頓のためには、必ずこういうコミュニケーションが必要になります。
「これってまだ要るの?」
「何でこの書類、ここにあるんだっけ?」
「捨てて良い?」
こうして部署をまたいだコミュニケーションが発生してくれます。
また、
「あ、この契約書で思い出したんだけども、この会社の●●さんに担当者変わったこと言ったっけ?」
「そういえば、このフォルダに保管してた☓☓の件、報告書作成しておかないとね」
等と、仕事の抜け漏れを発見する契機にもなります。
しかも整理ができると、何となく達成感があるもの。いい気分のまま仕事に入っていける「ウォーミングアップ」的な機能も持っているのです。
たかが掃除、されど掃除、というわけです。
●コミュニケーション活性化策②「朝礼」「昼礼」
朝礼.jpg
日本企業といえば、朝礼。ここで、職場全体で共有した方が良いようなトピックを口頭で共有します。
もちろん正式にはメールなどできちんと手元に情報は来るのですが、メールだと「感情」は乗せづらい。
例えば「●●の目標を達成しました!」
「☓☓案件取れました」
等の嬉しいニュースはここで拍手と共に共有します。
また、スタッフの誕生日や記念日、個人的なことも発表してもらうと、職員同士のコミュニケーションのきっかけになったり、人となりを理解し合う大事な要素となったりします。
ダメ押しでビジョンやミッションの唱和や、今日、どんな行動指針に注意して仕事をしていくか、の発表を即席スピーチしてもらったりもしています。これによって額に入れたまんま風化しがちなビジョンや理念が浸透していく、というわけです。
FLRウェイカードキャプチャ.jpg
うちはシフト制で全員朝に揃わないんだよ、という会社さんは「昼礼」等、時間を変えてやってみるのもお薦め。弊社もシフト制勤務者や、時差通勤者がいるため、朝には全員揃っていないため、2時から昼礼をやっています。ちょうど眠くなる時間だったりするので、気分転換代わりにちょうど良い効果を発揮します。
●コミュニケーション活性化策③「ピカリパット」
よく工場や建設現場などで使われる「ヒヤリハット」という言葉、ご存知ですか?
ヒヤリとしたり、ハッとしたことを集め、事故予防に生かしていこう、という考え方です。ハインリヒという人が発見した「1つの大きな事故の前には29の小さな事故が起き、300のヒヤリハットが発生している。だから、ヒヤリハットを収集・分析することで、事故の要因を断てば、事故を未然に防げるのだ」という理論がもとになっています。
これのポジティブ版が「ピカリパット」。いや、我々で勝手に造っただけなのですが、ぴかっとしてたりパッとしていることを社員がしていたら、カードに書いて褒めようよ、という制度です。
といっても何か報酬がないと皆乗ってこないため、四半期に一回、ピカリパットを一番集めた人と、ピカリパットカードを一番書いた人を表彰し、プレゼントを渡しています。プレゼントの中身は「特別休暇1日券」。
ピカリパット.jpg
モノよりも感謝され、なおかつ現金が出て行かず、社員のモチベーションにも寄与するのが休暇です。誰かが休めば、それをフォローする社員も育つので、どんどん休んでもらうのは結構なこと。そんなわけで、「褒めあう」を制度化したのが、このピカリパット制度なわけです。
●コミュニケーション活性化策④「マネランチ」「懇親会補助」
また、コミュニケーションの基本が「一緒に飯を食う」です。
しかし、安月給の我社は、皆がお弁当を作ってきていて節約モード。これでは中々「ご飯でも食べながら悩みを聞く」なんていうコミュニケーションには繋がりません。
ということで、マネージャに月1万円ほどの「ランチ予算」を持たせてあげれば、週に1回部下とサシでご飯を食べに行けます。「マネージャランチ」略して「マネランチ」。これまで何かと渋っていた部下とのランチも、せっかくの予算を使い切らないともったいない、という年度末の役所と同じ理論で、せっせと行ってくれるようになりました。
更には同僚同士の絆を深める意味で、懇親会にも毎月2万円程の補助を出しました。これも使い切らないと理論で、それまでやらなかった歓迎会や誕生会、プロジェクト成功お祝い会なんかをやってくれるようになりました。飲み会費、としなかった理由は、子育て中の人等は夜だと参加できなくなってしまうためです。お昼にみんなで、若干優雅なお店(といっても300円くらいいつもより高いところ)に行って、わいわいがやがややる、というふうにすれば、こどもがいる人も参加しやすいですし、無駄に深夜まで飲んで、翌日の生産性を損なうこともありません。
このようなコミュニケーション施策を生産性向上策と共に走らせたことによって、雰囲気を壊さず、それでいて効率を極限まで高めることができていったのでした。
●まとめ
全4回に渡る連載の要点を最後にまとめます。
①働き方革命を実行し、ワークライフバランスの実現された職場を創造することは、企業にとって「得」。利益も上がれば従業員満足度も上がり、良い事ずくめ!
②なおかつ働き方革命は投資金ゼロで可能。だから企業の規模の大小は関係ないし、好不況も関係なし!
③ただしやり過ぎると、雰囲気が壊れるので、コミュニケーション活性化策とセットでやることで、「ゴキゲン」なのに「真剣勝負」な職場が実現できる!
④働き方を変えて、職場を変えて、業績を伸ばしていきましょう!
これまで1年近く連載させて頂き、誠にありがとうございました。
我々のような社員120人程度の団体でもできたのです。皆さんの会社でできないことがあるでしょうか。
あなたの職場で、小さな一歩が踏み出されることを期待しています。



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当記事はNPO法人フローレンス代表理事 駒崎弘樹の個人的な著述です。
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