「経営者が教える『本当は他社には教えたくない、ワークライフバランスで得する方法』」3
「ろうさい」連載コラムを転載。
●前回までのあらすじ
前回までの連載の内容を二行で表すと
「ド中小企業の我々が、働き方をカイゼンしたら、儲かった」
「会議ルールやメンバーの見える化を行ったら会議時間が超短縮された」
であります。
今日は残業代をメッタ切りにする小技を紹介していきます。
●ひと仕事ふたり原則
残業しまくっている社員の特徴。それは「抱え込み人間」であるということです。財宝の山を見た海賊よろしく、仕事をこれでもかと抱え込みます。そして余裕がなくなりアップアップしてしまい「仕事が多すぎる、大変だ!」と不平をこぼすというお決まりのパターンを辿ります。
このように仕事がブラックボックス化していると、その仕事に人が貼りついてしまうので不透明かつ非効率になり、残業の温床を造ってしまいます
そこでオススメしたいのが、このひと仕事ふたり原則です。その名の通り、ひとつの仕事をふたりでやる、というもの。それって効率悪くない?と思われるかも知れませんが、さにあらず。例えば弊社の事例でお話しましょう。
例えば給与担当。弊社では3ヶ月ごとに担当が交代します。あるいはWEB担当。軽作業は内部要因で、重い作業は外部業者に発注です。採用もA〜Dさんまでは宮崎さんの担当で、E〜Hさんまでは市橋さんの担当です。
そうすると一つの業務について深く知っている人が二人いるので、例えば一人が風邪で休まなくてはいけなくなった時に、すぐに肩代わりできる人が一人いる、ということになります。この体制はとてもトラブルに強いです。
更には相手と業務をシェアしないといけないとなると、色々と手順は揃えないといけません。ですので、マニュアル化が進みます。マニュアル化が進むと、非効率な「オレ流のやり方」が排除されます。そうすると、長い目でみると業務をシェアする方が効率が良くなるわけです。
そして効率が良くなると、残業が減る、というわけなのです。
ちなみにこのひと仕事ふたり原則。残業が減るにとどまらない効果も発揮します。これをやると「休みが取りやすい」職場になるのです。なぜって自分がいなくても、誰かがやり方が分かっているので、代わってやってもらえるから。休みが取りやすい職場は社員満足度が上がります。一円もかけずに、社員満足度があげられるわけです。我々はお金がない中小企業ですからね。ありがたや。
●休暇強制主義
でも中にはそれでも囲い込んでしまう人がいて、そういう人には強制休暇の刑です。しかも3日〜1週間ほどの日をまたいだ休みを強制します。1日やそこらなら何とかなりますが、何日も続くとなると、嫌でも引き継がなくては社内で白い目で見られてしまうので、ワークシェアが進みます。
しかも休めない休めないと言いつつ、休むと気分が楽になったりするもので、モチベーションが上がって帰ってくるので、会社にとってはワークシェアが進む以外にも嬉しい効果です。
●在宅勤務
残業撲滅には、社員の生産性の向上が鍵になります。たいしてお金もかからないのに、多くの中小企業がやっていないことが、この在宅勤務です。
社員から「職場にいると話しかけられて集中したいときにもできない」という悩みを受けたのが、この在宅勤務導入を考えたきっかけでした。最初は私も「そんなことをやらせたら、ドリフでも見ながら仕事をするに違いない」等と疑心暗鬼になっていたのですが、よく考えたら日報などでタスクを管理して進んで無ければ在宅勤務をやめさせれば良いだけ、と考えてOKしました。
実際に在宅勤務をやってもらったところ、あら不思議。社員の生産性が25%近くアップしたのです。どうやら自宅は誰にも話しかけられず、大変集中できるということです。当然残業などせずに仕事は終了します。
「これは良い!!」と思い、「もうオフィスには来なくて良いです」とその社員には伝えました。週5で在宅勤務にシフトして頂きました。すると、最初のうちは調子が良かったのですが、途中から生産性がぐんぐん落ちてきました。急いでその社員に聞いてみたところ「わたし、、、寂しいです」との反応が帰ってきました。
そうです、いくら集中できると言っても、全くコミュニケーションがない、という環境はやっぱり良くなかったようです。今では週2を限度に、希望制で在宅勤務を申し出てもらうように調整しました。そのくらいの頻度が弊社の社員にとっては一番はかどるペースのようです。
在宅勤務導入のお陰で、生産性が向上した結果残業が減り、更には「打たれ強く」もなりました。どういうことかというと、例えばこんなことがありました。
システム担当の社員のお父さんが危篤だそうです。明日にも帰ってお父さんの看病をしなくてはいけません。それはそれは大変だ、ぜひ行って下さい、とは言ったものの、待ったなしの仕事がその人には任されています。
もちろんワークシェアはしているものの、突然だったので、業務が相棒に全てのしかかりそうになりました。そうした時に、そのシステム担当の社員は「いえ、看病の合間に在宅で働けます」と言って、週2回、4時間だけ働いてくれました。
業務の続行には、それだけで十分でした。彼女も無事後悔なく親に付き添うことができ、弊社では何のトラブルもなく業務が回り、ご不幸があったとはいえ、会社・社員ともに悔いのない対応ができたのでした。
残業を減らし、なおかつトラブルにも強くなれる、という嘘みたいにお得なツールが、この在宅勤務なのです。
●ひきこもりタイム
在宅勤務に効果があるのは分かったけれど、会社にいないとできない作業がある時は、やらせられないよ、という声が聞こえてきそうです。確かに実際の商品を目の前にしないとできない、という業務担当の方もいらっしゃるでしょう。
私達の会社でも、例えば出先に行くことが多い社員は、なかなか在宅勤務を使うことができませんでした。そんな時にはこの「ひきこもりタイム」。これは、話しかけられないで作業したい時は、いつでも会議室や空いている部屋、はたまたスターバックス等のカフェに行ってよし。コーヒー代は「本日のコーヒー」までなら経費持ち、という制度です。どこも空いてなければウォークマンのイヤフォンをして音楽を聞くことで、周囲の音をシャットアウトしてOK。そしてイヤフォンをしている時は話しかけないで、の合図なわけです。
何を隠そう自分も相当神経質なタチで、会社の机に座って書き物とかができないタイプ。逆に喫茶店とかだと他の人の話し声とかは気にならないので、気分転換もあいまって、サクサク進みます。
社員の集中力は資源です。集中しやすい環境を選んでもらえるようにすることで、残業を減らしたわけです。
●前業
「それでもどうしても残業しなくちゃいけない時がある」
私はそう社員から言われました。
確かに月末月初、仕事に波がある業務の社員は残業ゼロは苦しそうです。
私は答えました。「そういう場合は仕方がない。でも、夜やらないで、朝やろう。」
そう、夜よりも朝のほうが人間は集中できます。皆さんも経験があろうかと思います。期末試験前等、夜中まであると思うと、途中はダラダラしがちで、眠いし疲れてるし、しんどい中やっても効率悪けれど、でもやらなきゃ、というような状態を。
しかし朝ならば、なぜかテンションが高いですし、あまり電話も入ってはきません。何より、「始業時間までにやらないと」というゴールが設定されますので、集中しやすいのです。
例えば朝7時〜8時まで前業をやってもらって、8時〜9時は通勤、9時出社、というようなことが可能になっています。同じ残業代を出すならば、密度が濃い方が良い、と思うのはきっとどの経営者も同じかと思います。
●抵抗勢力には・・・
こうした様々な取り組みによって、ガンガン残業時間数は減っていきました。残業時間が減るということは、残業代の支払いが減る、ということ。コスト削減になって、なおかつ売上は落ちないなんて、経営者としてはウハウハです。
しかしそこに最後の壁が立ちはだかりました。それが中間管理職の人々です。
彼らは「忙しいことは良いことだ」というヘッドギアから解放されていませんでした。「部下から尋ねられる」というのは「頼りにされている」と脳内変換してしまいます。「部下が暇そう(余裕がある)」だと、許せない気分になります。忙しさが「充実」だと思ってしまいます。そんな彼らは最大の抵抗勢力でした。
「この忙しいのに、残業無理なんてありえないっす」
とばかりに影で文句を言い出す始末。
それにはどうしたか。まず、自分自身の残業時間をほぼゼロに近づけました。そして「この会社で一番忙しいのは僕だと思うのだけど、その僕でもできたんだから、君にもできるよね」と言い聞かせます。
それでも納得いかなそうだったので、自分が壊れたテープレコーダーになったつもりで、何十回何百回も繰り返して伝えました。
「君に期待しているのは、君がいなくても回るチームを創ることだよ」と。
そうした地道な努力の結果、社員一人当たり平均残業時間数15分/日、というベンチャーにしては驚異的な残業時間の少なさを誇る職場に生まれ変わったのでした。
次回では、残業時間数が減り、生産性が極限にまで高まった弊社を襲った意外な落とし穴をご紹介します。
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当記事はNPO法人フローレンス代表理事 駒崎弘樹の個人的な著述です。
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