【大手小町】保育園狂想曲序章
妻の復帰は1年後だが、今のうちに地元の保育園事情を掴んでおこうと、市役所へ足を運んだ。
保育課の窓口の方は若手男性で、こちらの質問に丁寧に答えて下さった。自分が保育園経営者であることは、特に言う必要もないと思ったので、いちパパとしてフンフンと神妙に聞いていた。
東京都に隣接した地元市でも、待機児童問題は相当なものだった。うちは駅前なので、近場の園は激戦区で、更に絶望的なようだった。
「次世代育成推進法の行動計画で、あ、いや、市の計画とかで、保育園の増園計画を作られているかと思いますが、来年度開園予定園などはありますか?」
担当者の方曰く、
「いやぁ、そういうのはないんですよね。」
「え?一園もですか?」
「はい。ただ、既存の公立認可園を民営化したりはしています。」
「なぜ増園しないのでしょうか?」
「財政的なものもありますし、事業者の方も中々園を作りづらいというのもあるのかもしれません・・・。」
「じゃあ僕が造ります。」と喉まで声が出かかったが、抑えた。いかんいかん。今はいちパパである。
「分かりました。最後に、各園の実績を見たいので、第三者評価をお見せ頂けますか?」
第三者評価とは、保育園を外部から評価する仕組みで、その園の質をみるための重要な指標の一つだ。市民に公開が義務付けられている。
若手の担当の方は、何か専門的な質問が来たな、という感じで一瞬戸惑いつつ「ちょっと、上司に聞いてみますね」と奥に相談しに行った。
待機児童問題に挑むNPOの経営者が、待機児童に悩まされそうなんて、笑えないジョークだなぁ、、、なんて妻に呟いていたら、上司らしき人が出てきた。
そして上司は驚くべきことを口走った。(つづく)
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当記事はNPO法人フローレンス代表理事 駒崎弘樹の個人的な著述です。
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