両親教室潜入記
妻が妊娠中ということで、居住している川口市保健センターが主催している両親学級に行ってきた。
両親学級に参加し、来るべき出産、そして子育てに備えるのだ。
だがしかし、まず申込みが「ハガキ」オンリーというところが突っ込みどころ。何百人も受けるのだとしたら、明らかにメールフォーム等の方が生産性が高い。エコロジー的な観点からも、ハガキはお勧めしないはず。
しかしそれはまぁ、何と言うか、仕方ない。自治体だし。
気を取り直して、保健センター目指し、バスに乗車。するとバスは妊娠中の妻+夫というカップルでほぼ満員になっている。意外に高い集客力。おそるべし、両親学級!
そしてバス内では奥さん同士が「あー、久しぶりぃ、元気?」等と見知った風なコミュニケーションを行っている。不審に思って妻に聞くと「母親学校で知り合ったんだと思うよ」とのこと。君も行けば良いのに、と僕が言うと「母親学校は平日なんだよ」という答え。
つまり働いている妻は参加したくても参加できないのだ。ちょっと待て、今は専業主婦世帯よりも共働き世帯の方が多い。
にも関わらずかつての「奥さんは平日暇でしょ」的な価値観に立ってプログラムが組まれているなんて、川口市よ、昭和過ぎるYO!
いきり立つ僕を横目に「でも、共働きの妻が参加できるとなると土日になるから、職員が土日出勤になって大変だよ」と自分が公務員であることから、公務員寄りの意見の妻。
いや、ちょっと待てよ、と。もし川口市行政職員が土日出勤大変なら、子育て支援NPOに委託すれば良いだけの話じゃないか。ビデオ見せて沐浴の仕方教えるのに、保健師資格持った職員じゃないとどうしてもダメなのか。
とまだ始まっていないにも関わらずヒートアップしていたら、保健センターに到着。講堂に集まり、そこでNHKエデュケーション作成のビデオ教材を見る。
ストーリーは、あるカップルの子どもが産まれるまで、そして産まれてからの生活の物語。妊娠中の妻の心身の変化、出産、こどもの成長と、妻と夫の役割の特徴。
コンパクトにまとまっていて、良い内容であった。妻は途中涙していた。
さすがNHK、龍馬伝と言い白熱教室と言い、良い仕事している。
心洗われた後、今度はグループに分かれて沐浴実習。保健師の方が見本を見せた後、各カップルの夫の方がお人形さんを沐浴させる。
おっかなびっくりのプレパパ達。パタニティ(パパのマタニティ)生活は長いとはいえ、赤ちゃん(みたいな人形)に関わることは初めての経験だ。
そんな中僕は1人で余裕だった。保育会社経営の自分は、実習等で乳幼児には随分と触れている。そこらのプレパパとは年季が違う。
一人優越感と共に、他のプレパパに対し「違う、指で頭を固定しないと!首座ってないんだから」「石鹸飛ばすな!」等と心の中で偉そうに指導までしていたのだった。
そして自分の番。妻に、「良いか、俺の手技を見て学べよ」と言わんばかりに沐浴をスタート。
顔を拭き、頭を洗い、手や足をくるくると回しながら洗う。
そして手順通り、お腹を持って赤ちゃん人形を裏返し、背中を洗う。
我ながら見事な手さばき。ほれぼれする、、、と思ったら、赤ちゃんの顔面が湯にインしていた。実戦だったら危うく愛娘をおぼれさせてしまうところであった。
妻が見ていなかったことを確認し、体を流し、タオルにくるんで押し拭きした。
結論として、当初なめていたが、実際に手を動かしてみると成功イメージが描けるようになり、非常に勉強になった。
更に次のコンテンツとして「妊婦体験」にチャレンジした。
これは妻の気持ちを理解するためのツールで、
妻が通常妊娠中に太る重さ+赤ちゃんの重さ=計12キロくらいの
代物で、お腹とおっぱいを装着できる。
実際これを装着すると、まず重さに驚く。そういえばドラゴンボールでこういう修業あったな、と思いだしてしまうくらい、動きづらい。
靴紐も結びづらいし、かがんだりしゃがんだり、ということが非常に大変だ。
更に仰向けは苦しいので、寝るときは横向きじゃないと厳しい。
妻がなぜ歩くのが遅いか。疲れやすいか。そして如何に日常生活にストレスが多いか、ということを頭ではなく体で感じることができた。
これは以前、視覚障害者の方の立場を理解しよう、ということで目隠しをして立川駅周辺を散歩する、というプログラムを受けたことがあるのだが、その時に「闇の中を生きる」ということの大変な心細さを体感した時と同様の「体による理解」を得ることができた。やはり「知っている」と「体で分かっている」というのは違う。
さて、総じて非常に楽しく、またためになるプログラムだった。イクメンレベルを上げることができた。もっと多くのプレパパが妊婦スーツを装着すれば、日本のマタニティライフは確実に向上するに違いない、と断言しよう。
しかしより多くの共働きカップルが受けられるためには、改革が必要だ。それは
1.ハガキ→ネット申込み
2.母親教室が専業主婦向けで平日→共働きも参加できるよう土日
3.保健センター職員による低頻度開催→NPOへの委託で高頻度開催
である。
また、行政改革を要望するなら、同時に「自分改革」もしなくてはフェアではあるまい。今後は妊婦スーツ装着で妻の負担を学んだのだから、より細やかなケアを妻にすることを宣言したい。
そんなわけで両親教室潜入記でした!(キリッ
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当記事はNPO法人フローレンス代表理事 駒崎弘樹の個人的な著述です。
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