離婚、再婚、不妊治療を経て、シングルマザーが気づいたこと
年々増加するひとり親家庭。ここ20年で約35万人増加し、100万世帯を超えることが近年の調査でわかっています。
以前に比べて理解は深まってきたとはいえ、ひとり親家庭は低収入世帯が多く、子育ても仕事もすべてひとりで抱えている方が多いのが現状。フローレンスでは病児保育をはじめ、さまざまな形でひとり親家庭と関わってきました。
今回、こども宅食に魅力を感じ「ご一緒したい!」と声をかけてくださったのが、佐賀県でひとり親家庭をサポートするスマイルキッズ代表の福島めぐみさんです。
活動内容、なぜこども宅食を必要としているのか──ご自身もひとり親家庭として同じ目線で活動を続ける福島さんの想いを伺いました。
──スマイルキッズさんは佐賀県で、ひとり親家庭のサポートをされています。活動をはじめたきっかけは?
福島:今年でスタートして10年目になるのですが、最初は子ども用品専門のリサイクルショップでした。
リサイクルショップをはじめたきっかけは、ひとり親の時に、子育て経験者で相談に乗ってくれる人や同じ境遇の人、ステップファミリー(再婚して新たな家庭を築き家族のこと)など、周りにいる人たちに気軽に相談できることで助けられた経験があったんです。
私も社会へ恩返しをしたいと思った時に、私にできることは同じような悩みを抱えている人たちが集える「場所」を作ることだと思って、リサイクルショップという形でスタートしました。
──リサイクルショップからスマイルキッズという現在のスタイルに、どのようにたどり着いたのですか?
福島:初めは通常のリサイクルショップ同様、売りに来る人と買いに来る人だけでした。
ですが、私自身ひとり親で、再婚を経験して、三つ子がいて、不妊治療もしていて。いろんな家庭経験があるのと、そういうことを包み隠さず話すタイプなので、次第に「私もひとり親なんです」と話してくれる人が多くなっていきました。
ひとり親や離婚など深い話って、簡単にはできないんですよね。
だから、お客さんが友だち、またその友だちを連れてきて、多くの人が私と話をすることを目的にお店に来てくれるようになったんです。
それで、もうこれはリサイクルショップという形がメインではないな、と(笑)
悩み相談を気軽にしてもらえるスタイルをとろうと、現在のスマイルキッズをはじめました。店舗がなくなってからは相談希望の方のご自宅へ足を運んで話したり、何人かのお母さんで公民館を借りて話したりしました。
──リサイクルショップもスマイルキッズも、相談できる「場所」を作っているのは共通していますね。
福島:そうですね。同じ境遇だからこそ辛さがわかりますし、互いを助け合いたい気持ちは強いと思います。
お店を閉めてからも、使わなくなった育児用品を同じ境遇の人に使ってほしいという声を、私宛にたくさんいただくんです。
──福島さんのような経験者に相談できることは、同じ境遇の方にとって、とても心強いことですよね。
福島:三つ子を産んで、子どもたちが1歳半の時に離婚をして、再婚をして2人の子どもを産んでいますから、人よりいろんな経験はしていると思います。三つ子を抱えて離婚した時が、いちばん大変でしたね。
──差し支えない範囲で、どのような状況だったかお伺いできますか?
福島:まず、家を借りられないんです。ひとり親家庭で小さい子どもが居ることが引っかかってしまって、1、2ヶ月家を探しました。
20年前は、それくらいひとり親の肩身は狭く、偏見がある時代だったんですね。今は時代が変わって、ひとり親でも収入があればお家が借りられますし、周りの偏見も減ってきたと思います。
──現在のひとり親家庭への支援というのは、どのような状況なのでしょうか?明るい部分もあれば、まだまだ支援が必要なことも多いと思います。
福島:ここ2-3年で「ひとり親家庭」が注目されるようになって、行政の考え方も変わってきたなと実感します。もちろん「自分で選んだ道だ」という人もいますが、ひとり親でも隠さずに生活ができるようになったと思いますね。
──以前はひとり親であることを隠す方が多かったのでしょうか?
福島:多かったと思います。今も居るでしょうけど、もっと多かった。根掘り葉掘り聞かれて、偏見を持たれるくらいなら隠したいですよ。
まだ充分な支援がないと感じるのは、母親や父親の就労面の支援ですね。正社員として働けるなら収入も安定しますけど、そういう職に就けることがなかなか難しいです。
たとえば以前相談を受けた方は小さいお子さんをお持ちで、面接で「子どもが熱を出したら仕事を休みますか?それとも預ける場所はありますか?」と選択を迫られたんだそうです。
仕事を休むことを選んだら、きっと採用してもらえない。そこで多くのひとり親は、ひとりで悩みを抱えてしまうと思います。
──ですが、働かないと子どもたちも養えないですもんね。
福島:正社員になれず、パートで働くひとり親って多いんですね。でも、昼間の仕事だけでは生活が苦しいから、家庭のために夜も仕事をしなきゃいけないことがあります。
そうすると、たとえ親が子どものためを思って、申し訳ないという気持ちを抱えながら心を鬼にして働いていたとしても、傍から見たら「あそこの家は子どもを置いて夜に仕事をしている」って偏見を持たれることがあるんです。
そういうひとり親の気持ちは、周りになかなか伝わりませんね。
──そういう気持ちは、経験者だからこそわかることでしょうね。
福島:そうだと思います。「こども宅食」に興味を持ったのも、1年前に佐賀未来創造基金の山田さんに「ひとり親家庭に食品や物を配りたい」と話したことがきっかけで、つないでくれました。
──興味を持っていただけたのはどんな部分に?
福島:ひとり親家庭というのは、表に出てくる人ではなくて、表に出られない人がいちばん大変な思いをしていると思うんです。
うちの子が小学生の時、小学校で裁縫道具の注文書を渡されたんですね。でも、子どもはお母さんが大変なことを感じていたので、なかなか親に言い出せず注文書はランドセルに入れたままで。
学校で必要な物なんて、あらかじめわかっています。子どもも苦しまないように、必要な物の寄付をお願いして、ひとり親家庭に届けることが必要なんじゃないかと思っています。
──しかるべきところに届けて、つながりの中でサポートを持続することは、私たちも大切だと思っています。
福島:私は「こども宅食」を母子生活支援施設に届けたいと思っています。
母子生活支援施設は、さまざまな事情を抱えたお子さんとお母さんが入所する施設で、日常生活や就労など、自立に向けたサポートをする場所です。
施設を利用されている方々のご事情はそれぞれでしょうけど、佐賀県の場合は5万円ほどの家賃を払える収入があれば母子生活支援施設を出られるんですね。
母子生活支援施設で住むことを想像すると気楽じゃないというか……。事務室があって、隣人の生活をよくみていて、気が抜けない状況だと思うんです。
もしも私が母子生活支援施設で生活していたら、お給料が入って靴下ひとつ買ったとしたら、カバンに隠して家に帰ると思うんです。美味しいケーキを食べたことも話せない。
私が気にしすぎなのかもしれないけれど、母子生活支援施設の方々をまず先にサポートしたいと思いました。
──こども宅食が届くことやスマイルキッズを通して、こうなってほしいという展望はありますか?
福島:お母さんが自信を持って、ひとり親の生活に対して前向きな気持ちになれるように声掛けをしたいです。
表に出られないお母さんたちが堂々と生活できるように、伝えていきたいですね。
──福島さんご自身の経験が、血肉となり活動に生きているように思います。
福島:幸せになる権利はみんなにあるじゃないですか。
私自身ひとり親になる前も、なった後も、ひとりでいろんな事を抱え込んでしまって、育児ノイローゼになったんです。どこにも行く当てがなくて、本当に辛かった。
そういう辛さを他のひとり親の方々に経験してほしくないですし、お手伝いしてくれる人や助けてくれる人は周りにいるんだと知ってからは、心が救われました。
だから、ひとりで抱え込まずに、周りの助けを得ながら前向きに暮らしてほしいと思っています。
こども宅食では、福島さんのように「こども宅食をはじめたい!」という方や地域の方々の話を聞きながら、本当に必要な取り組みにできるように尽力していきます。
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