駒崎 弘樹 公式ブログ
提言・アイデア
今年から特別養子縁組でも育休取れるようになったんですが、御社、ちゃんと就業規則変えてますか?
特別養子縁組を行なっている認定NPO法人フローレンス代表の駒崎です。
今日はこれから養子を迎えたいな、と思っている人。さらには会社経営者、人事の皆さんが知っておいた方が良いことをご紹介いたします。
【閉鎖的だった育休制度】
これまで、育児休業制度は、基本的には法律上親子関係のある子どもの養育のための制度でした。
しかし特別養子縁組で子どもを迎える場合は、途中まで「法律上親子関係のある子ども」ではないため、育休から除外されていました。
途中まで、というのは、こういうことです。特別養子縁組というのは、子どもを縁組団体等から受け渡された後、家庭裁判所に「特別養子縁組請求」というのを出して、家庭裁判所の審判を経て「特別養子縁組許可」というものがでます。
この間、6ヶ月以上。この期間のことを「監護期間」と言います。で、この監護期間の時は、一緒に住んで暮らしているんですが、法律上は親子ではありません。特別養子縁組許可が出て、その後、お住いの市役所に届け出をして初めて、法律的には親子になるんです。
従来は、この「監護期間」中は、法律上親子じゃない=育休の対象じゃないよね、とされてきてしまったわけです。
そうすると、養親達は育休を取れず、多くの場合は(主に妻側が)仕事をいったん辞めなくてはいけませんでした。
これでは、特別養子縁組カップルに不利だし、平等でもありません。直そうよ!と多くの関係者(僕もその一人ですが)が、厚労省に要望を伝えていました。
【育休制度が監護期間にも】
そうした声を受けて、厚労省は特別養子縁組の監護期間中も、育休が取れるよ、と法改正してくれました。もちろん育児休業給付金も出ますし、休業中の健康保険・厚生年金保険などの保険料の免除もセットです。
これでまた一つ、特別養子縁組のハードルが低くなりました。共働きカップルでも、特別養子縁組がしやすくなったのです。厚労省には、とっても感謝です。
しかし、これでハッピーエンドかというと、もう一つ立ちはだかる壁があったのです。そう、御社の「就業規則」です。
【就業規則のアップデート、ちゃんとしてる?】
法律は変わっても、会社の就業規則が変わらないと、せっかく特別養子縁組を行なっても、人事部から「え、知らないんだけど」「うちはそういうルールじゃないから」等と言われてしまいます。
会社が特別養子縁組カップルに育休を取らせなかったら法律違反なので、労基署に駆け込めば勝てますが、そこまで物騒なことはしたくない、という人は多いと思います。
ですので、将来養子縁組を考える方々は、今のうちに人事部や経営者に伝えて、就業規則をアップデートしておいてもらってください。
また、これをお読みの経営者や人事関連者の皆様は、社員から指摘される前に、就業規則のアップデートを忘れないで下さい。
特別養子縁組で育休を取らせなかったら法律違反です。「知らなかった」では済みません。
また、人事や経営者の怠慢によって、育休が取れない(よって仕事を失う)ことで養親になるのを躊躇するカップルが一組でも出たら、それは本来誕生するはずだった家族を、一つ失わせたことになるのです。
これを読んだら、すぐに就業規則を確認してください。
【まとめと次の一歩】
というわけで、養子を将来考える方と、人事・経営者の皆さんは、今すぐ就業規則改定に動きましょう。
さらに、それ以外の一般の方々にも力を貸してほしいことがあります。自分が養子を迎えることを考えてなかったとしても、お勤めの会社の人事部に問い合わせを入れてください。
多くの会社は、このことをまだ知りません。皆さんが問い合わせることで、人事部が気づくきっかけになります。
すると「あ、やべやべ。直しとかないと」とアップデートされます。
そうすると、これから何年後かに、本当に養子を迎えたカップルが育休申請する時に、何の痛みも感じずに、スムーズに育休に入っていくことができるでしょう。
いつか生まれる温かな家族のために、ぜひ一肌脱いで、ならぬひと問い合わせメールしてください。
みんなで特別養子縁組も当たり前で、どんなカタチの家族でも、笑って暮らせる日本を創っていきましょう。
参考:育児・介護休業法のあらまし(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/pamphlet/dl/32_01.pdf
追記
・養子を迎えたい、という方はこちらで相談に乗っています
・産んでも育てられない、養子に出したい、という希望をお持ちの方はこちらにご相談ください