駒崎 弘樹 公式ブログ
提言・アイデア
第24回内閣府子ども子育て会議にて要望したこと(里親の育休・一時保護所の改善等)
子ども子育て新制度がスタートしました。内閣府子ども子育て会議も新しい委員となりましたが、ありがたくも再任頂きました。
Twitterによる会議のゲリラ実況は継続しつつ、毎回提案書を出しているので、それもSNSでアップしようと思います。
というのも、最近NPO関係者等から、「審議会に呼ばれたが、どんな意見をどのように出したら良いのか分からない」という声をよく聞くからです。
審議会というのは、好き勝手な感想をダベる場所ではありません。政策を創っていくプロセスの一つです。そこで語られたことが、報告書や答申となり、それらを基にして、新たな事業や制度となっていきます。
報告書や答申にアイディアの原型が入ってなければ、制度や政策、事業に反映する可能性は低くなります。よって、如何に審議会及びそれに附随するコミュニケーションの機会を利用し、アイディアを政策担当者にインプットしていくか、が重要です。
そうした審議会において、口頭だけでなく、ペーパーを作成し、それを基に陳述することで、より政策担当者が報告書や答申を作成する際に、盛り込まれやすくなります。
内容は、下記のように簡単なもので良いので、NPO関係者の方々も臆せず論旨を箇条書きにし、出していくと良いでしょう。
NPO関係者の方々は、現場で社会問題の最前線で闘っています。そこから見える課題や問題、こうすれば良いのに、ああすれば良いのに、という思いは貴重な宝です。後は、それを他の人々が分かりやすい言葉とロジックで伝えるだけです。
というわけで、ご参考までに。
・実況のまとめはこちら(@bu0210 さん感謝です)
・子ども子育て会議の公式WEBはこちら
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子ども・子育て会議 御中
2015年5月21日
意見書
【小規模保育の連携園について】
・ ・世田谷区等では、小規模保育の認可申請の条件として、連携を事業者側で用意すること、としており、自治体が連携園を確保するという新制度のルールを理解していないか、あるいは理解していても誤ったアナウンスをしています
・ ・こうしたことがないよう、内閣府から自治体の連携園確保のための積極的対応を指導して頂きたいと思います。
【公定価格の定期的な見直しの仕組み化について】
・ ・昨年度において、当子ども子育て会議において公定価格が決定されたが、実際に動かしていく中で、不具合が見つかっていくことが想定されます。
・ ・その不具合を定期的に修正していく仕組みが必要です。
・ ・具体的には、経営実態調査等を基に、子ども子育て会議において公定価格を議論し、決定するメカニズムを、障害児者支援や医療、介護報酬単価と同様に持っていくべきだと思います
【里親や養親は育休が取れない件について】
・ ・虐待や親の精神疾患、死亡、行方不明といった理由で、親元などで暮らせない子どもは全国に約4万6千人(2014年3月末)。国がまとめた里親などへの委託率は15・6%で諸外国に比べて圧倒的に少ない状況です。
・ ・国はこの社会的養護に占める家庭養護の割合を3割にまで引き上げようとしていますが、目処はついていません。
・ ・里親を始めとした家庭養護を阻む壁の一つが、「育休の壁」です。現行法では、「法律上の親子」の場合にしか育休取得が認められておらず、共働き世帯が半数を超える現状と乖離しています。
・ ・育休の壁があるがゆえに、里親や特別養子縁組の親になるためには、どちらかの親が仕事を辞めなくてはならず、それが里親や養親になるための大きなハードルとなっています
・ ・翻って、育児介護休業法は5年ごとに見直しがされ、本年がその見直し時期です。
・ ・この見直しのタイミングにおいて、里親および特別養子縁組の試験養育期間のケースにおいても、育休を認めるよう改正するべきであり、この機会を逃すべきではありません。
・ ・厚労省職業家庭両立課において、是非とも前向きなご検討を望みます。
【虐待を受けた子どもたちを保護する一時保護所で、虐待が発生している件】
・ ・例えば、「被虐待児と非行児を同室にする」「子ども同士は会話禁止」「目を合わせることも禁止」「30分でグラウンド100周」「2週間部屋に監禁」等です。
・ ・当該一時保護所に過去、保護されていた知人に事実関係を確認したところ、その時も同様の指導がなされていたということです
・ ・同様の指摘は2010年、日弁連から人権救済申立の手続きで勧告が出ており、にも関わらず同様の状況が続いていることが示唆されます。(勧告は参考資料として添付)
・ ・一時保護所は、虐待児を始めとした困難を抱えた子ども達の生命を守るシェルターです。そのシェルターにおいて、教育虐待とも言うべき過剰な指導が行われている実態は由々しきもので、今すぐ所管課である厚生労働省家庭福祉課は実態調査に乗り出すべきです。
【所在不明児童対策に対し、連携協議会と情報突合システムを創設すべき】
・ ・昨年5月に厚木市において5歳の児童が父親のネグレクトによって死亡。白骨化して見つかる事件が起きました
・ ・被害者の児童のように「所在不明児童」が、必要な教育・福祉サービスも受けられず、虐待や殺人事件の被害者となっています
・ ・厚労省が自治体に照会し、5月時点で約3000人いた所在不明児は141人に減りました。しかし、まだ141人います。
・ ・今後、継続的に所在不明児を探す、また所在不明な事態が起きないように、以下の方策を要望します
① ①内閣府・厚労省・文科省・警察庁・総務省が、居所不明児童の捜索・保護活動の体制整備に関する連絡協議会の創設
② ②児童が居住している自治体と住民登録のある自治体で、情報突合が可能なスキームの創設
以上
NPO法人 全国小規模保育協議会 理事長
(財)日本病児保育協会 理事長
認定NPO法人フローレンス 代表理事
駒崎弘樹
【参考資料】
日弁連総第81号
2010年(平成22年)12月9日
東京都知事 石 原 慎太郎 殿
日本弁護士連合会
会長 宇都宮 健 児
勧 告 書
当連合会では,X氏申立に係る人権救済申立事件(2007年第11号人権救済
申立事件)につき,東京都に対し,以下のとおり勧告する。
第1 勧告の趣旨
申立人の子ども3名について,立川児童相談所が管轄し,八王子児童相談所内
に設置された一時保護所において保護した際,同所は,
1 東京入国管理局に収容中の申立人が子ども達との電話での会話を希望したに
もかかわらず,必要な手順の説明をせず,電話での会話はできないと回答して
これを妨げ,
2 兄弟姉妹間であっても男女間の会話を禁止し,別室で兄弟姉妹だけで自由に
会話できる機会も十分に設けず,
3 申立人の長女に対し,他の児童に話しかけたことと,所外での運動の際に学
校の先輩に挨拶をしたという理由で,3日間の私語禁止処分に処し,その間,
他の児童と隔離したスペースで書籍の書き写しをさせ,
4 本来児童への個別対応を意味し,懲罰ではない「特別日課」を懲罰として利
用し,
5 かつ入所児童を怖がらせ,その行動を心理的に制限して保護所内の秩序を維
持する目的で特別日課や私語禁止処分を予告し,
6 申立人の長男が甲殻類アレルギーであることを把握していたにもかかわら
ず,海老を食べさせ,
7 申立人の子ども達の通学を可能とする条件について協議することなく,一律
にこれを認めなかった。
以上の事実は,申立人ら家族の家族的結合,申立人の子ども達の生命身体の
安全,教育を受ける権利を侵害し,また懲戒権の逸脱ないし濫用により精神的
苦痛を与え平穏な生活をおくる権利を侵害する,人権侵害行為であることは明
らかである。
また,同所は,3大ルール(①無断外出の禁止,②プライバシーにかかわる
会話の制限,③男女の会話の制限)の 1 つとしてプライバシーに関わる会話を
制限するところ,その範囲は不明確で,過度に広範な制限として運用されてい
るおそれがある。
よって,東京都は,児童相談所が一時保護中の児童について,国連子ども
の権利条約,児童福祉法及び児童相談所運営指針に則り,
① 保護者による虐待の疑いがあるなど保護者との接触が当該児童の福祉に反
する場合を除き,保護者と児童との電話による接触を保障し,その方法等に
ついて保護者,児童その他関係者に対して丁寧な説明を行うよう,児童相談
所職員に対する指導を徹底されたい。
② プライバシーにかかわる会話の制限について,過度に広範な制限として運
用されないよう児童相談所職員に対する指導を徹底されたい。
③ 兄弟姉妹を同時に一時保護した場合には,一方ないし双方の児童の福祉に
反しない限り,兄弟姉妹が会話できる機会を十分に確保するよう留意すると
同時に,立会いの必要性についても個別に検討して無用な立会いは避けるよ
う,児童相談所職員に対する指導を徹底されたい。
④ 児童に必要以上の精神的・心理的苦痛を与えるものである私語禁止処分は
廃止されたい。
⑤ 懲戒権の行使は,他の児童の安全確保の必要から看過できない場合に限り,
3大ルールに違反したことのみを理由として懲戒権を行使しないよう,児童
相談所の内規を整備されたい。
⑥ 本来の趣旨に反する特別日課の懲罰的利用,個々の職員による恣意的な懲
罰権の行使,及び児童を怖がらせてその行動を心理的に制限し保護所内の秩
序を維持する目的で懲罰予告を脅迫的に利用することを防止するため,内規
や監督体制をより充実させると同時に,児童相談所職員に対する指導を徹底
されたい。
⑦ 児童のアレルギーに関する情報や,症状,対処法等の知識を全職員が共有
するよう,児童相談所職員に対する指導を徹底されたい。
⑧ 就学年齢にある場合には,児童を虐待していた保護者が児童を奪還する危
険性がある等やむを得ない場合を除き,児童の教育を受ける権利を尊重し,
学校その他の関係者と協議を尽くす等児童が学校に通学できるようにするた
め可能な限り努力をするよう,児童相談所職員に対する指導を徹底されたい。
⑨ 兄弟姉妹間の会話の機会を十分に確保し,あるいは登校可能な児童につい
て学校への通学を実現するなど,個々の児童に対して十分な対応ができるよ
う,児童相談所の人的体制の充実に一層努めていただきたい。
第2 勧告の理由
別紙「調査報告書」記載のとおり。