惜しい!東京スマート保育
【スマート保育とは】
猪瀬知事がぶち上げた東京スマート保育。(略してスマ保)
これまで、定員数20人以上でなければ認可保育所がつくれませんでした。しかし20人以上となるとある程度大きな物件が必要で、待機児童が集中する都市部で大規模物件を調達するのはかなり難しく、それが待機児童問題の要因の一つとなっていました。
東京スマート保育は、20人未満の少人数の保育所をつくって、機動的に待機児童を解消しよう!という企画。2010年からおうち保育園という小規模保育を行ってきた僕たちからすれば、「猪瀬知事、よくぞ!ご明察です!」と万雷の拍手を送ったのでした。
【制度欠陥】
だが、しかし。
東京都の保育支援課の人に、詳しい補助内容を電話で聞いて、顔面がホワイトプランになりました。
彼女曰く、現在考えている補助額は以下の通り。
初期補助:改装補助は最大1500万円まで。
運営補助:0歳児 - 7万2000円/月
1~2歳児 - 3万9000円/月
運営補助は、上記単価×子どもの数のみ
試しに小規模保育のスタンダード人数である9名定員で計算してみましょう。
0歳時が4人で、1~2歳児が5人の園で、利用料が2.5万円を想定します。
7万2,000円×4人+3万9,000円×5人=49万1,000円/月・・・月々の補助収入
2万5,000円×9人=22万5,000円/月・・・保育料収入
計:71万6,000円/月
では費用はいくらかかるか。保育士の給与を社保込みで18万円として、9人定員が可能になる3LDKマンションの家賃を18万円だとすると、
18万円×3人+18万円=72万円/月・・・最低でも月々絶対かかる費用
ということで、月の収入から、最低でもかかる費用を引いただけで赤字になる、というすごい制度であることが分かって頂けると思います。
これ以外にもおもちゃ代や水光熱費や給食材料費や本部事務局経費等が乗っかりますので、赤字確定モデルです。
一方で初期補助はたくさん出ますが、そもそも空き住戸を利用したモデルなので、ハードの改修費用をかけないのが小規模保育モデルの良いところ。1500万円も要らないのです。
これでは、参入する事業者は見込めず、また参入してきたとしても保育者の人件費を大幅に削らざるを得ず、そうすると保育の質に大きく影響してしまうことになります。
【なぜこんな制度に?】
おそらく猪瀬知事がビジョンを示したのですが、具体化する仕事を任せた役人さんが、過去の事例や既に基礎自治体で行われている取り組みを(おうち保育園とか9園もやっているけど)一切参考にしないで、急いで制度設計しちゃったのでしょう。
というのも制度つくる前に現場の事業者に15分でもヒアリングすれば、ソッコー分かる程のダメ制度であるためです。
【ではどうする?】
ここからは、関係者の方々にお願いです。
東京スマート保育は、方向性としては良いです。2015年から始まる子ども子育て支援法の中にも小規模認可保育所が位置づけられるので、15年までの過渡期に関しては、このような仕組みが必要です。そしてせっかくやるのだから、良い制度にしましょう。
まず、東京都関係部局の皆さん。補助制度を見直しましょう。今すぐに。
そして東京都都議の皆さん。議会できちんと指摘してあげましょう。制度の方向性自体は良いのでそこは褒めながら。
更に基礎自治体の保育担当課の皆さん。今のままだと、スマート保育スキームを使うのは得策ではありません。江東区や品川区と同様の、家庭的保育をグループ化した枠組みを使った方が、まともな補助システムにできますので、そちらを使いましょう。
どうしてもスマート保育スキームを使いたい場合は、基礎自治体自身で上乗せ加算しましょう。単費になってしまいますが、15年から国のお金がでるので、2年辛抱しましょう。
具体的には、固定補助と成果補助の二階建てにします。成果補助は子ども一人当たり8万4000円、固定補助は月額45万程度になるよう上乗せします。
そんなわけで関係各所の皆さん、惜しいことになっちゃったスマート保育、何とか良い仕組みにさせていきましょう!
以上、小規模保育の現場からでした!