子育て支援NPO代表が斬る、衆院選子育てマニフェスト比較
全国の子育て家庭の皆さん、選挙カーの候補者名連呼にゲンナリしていませんか?
しかし選挙に行かねば、我々子育て世代の声は、国政に反映されません。
あまりに我々が選挙に行かず、高齢者が我々の2倍選挙に行っているがゆえに、日本の公的支出比は高齢者:子ども(家族)が、11:1、というトンデモないことになっているのです。ということで、各政党の保育・子育て支援政策をがっつり比較してみましょう!
◎民主党(http://www.dpj.or.jp/special/manifesto)
1.社会全体で子どもの育ちを支援する
○妊婦健診の公的助成を含め、出産にかかわる費用の自己負担がほぼいらないように助成する。これまで拡充してきた不妊治療に関する支援をさらに充実する。
○子育て支援の予算を増額して、新児童手当と合わせて、保育所整備などの現物給付、育児・仕事両立支援の充実を図る。
○保育所定員の増員、放課後児童クラブなどの整備、質の高い幼児教育・保育などを実現するため、保護者や地域の実情に応じて計画を立て、着実にすすめる。
○保護者の就業形態にかかわらず、また都市部でも地方部でも安心して子どもを通わせることができるよう、幼保連携型認定子ども園や小規模保育などへの給付制度を着実に実施する。
○子どもにかかわる施策について、省庁の縦割りを排し、総合的な子ども・子育て支援を実施するため、2014年までに「子ども家庭省(仮称)」の設置について結論を出す。
現在壊滅危機の民主党ですが、子育て支援は今国会で「子ども子育て支援法」という保育史を変える改革案を通す等、地味に良い仕事しています。マニフェストでもそれを引き継いで、手堅い改善案を出してきています。与党になって、やれることとやれないことを、痛いほど思い知った渋さが良い感じで出ていると言えます。
とはいえ、この総スカン状態だと、政策など一顧だにされず「民主党以外」に入れよう、みたいな思考に国民がなっているので、惜しいですね。
◎自民党(http://jimin.ncss.nifty.com/pdf/seisaku_ichiban24.pdf)
・「若者支援」、「結婚」、「出産」、「子育て(教育)」を通じて家族を幅広く支え、子育てを幸せと実感できる「家族支援政策」を積極的に進めます。
・少子化問題克服のための、抜本的な意識改革や、仕事と家庭の両立支援など環境整備を促進します。
・待機児童解消のため、処遇改善などによる保育士の確保をはじめ即効性のある対策を講じます。また、現行保育制度を基本に、量・質両面の充実を図るとともに、ゼロ歳児に親が寄り添って育てることのできる環境の整備を進めます。
・年少扶養控除を復活させます。
基本的には良いと思うのですが、「ゼロ歳児に親が寄り添って育てることのできる環境の整備」というのが気になります・・・汗
これと、自民党が昨年出した「日本再興」を読み比べてみましょう。
日本再興(http://www.jimin.jp/policy/policy_topics/112141.html)
2.家族の絆を大切にする家庭教育と幼児教育の充実
(1)子どもの健全な発達にとって、乳幼児に対し親の愛情、スキンシップを最大限に注ぐことが大切である。そのため、父母ともに育児休業を十分に活用するとともに、0歳児については家庭で育てることを原則とし、家庭保育支援を強化する。
「0歳児については家庭で育てることを原則とし」。
お、おぅ・・・。
いや、育休を取って家庭で育てられる人もいれば、自営業とか非正規の方とか、どうしても預けなくちゃいけない人もいるわけで・・・。0歳児保育なくしちゃったら、そういう人はどうなるのでしょうか。
自民党はおそらく政権与党に返り咲くと思うので、そこらへん、ぜひともご理解頂きたいところですね。
◎公明党(http://www.komei.or.jp/campaign/nipponsaiken/manifesto/manifesto2012.pdf)
・18歳まで医療費負担を1割に – 現在就学前まで2割となっている医療費の窓口負担について、18歳まで1割への軽減を目指します。
・就学前3年間の幼稚園・保育所・認定こども園等の幼児教育の無償化を進めます。
・出産費用の負担軽減 – 出産育児一時金を現在の42万円から50万円に引き上げます。また、妊婦健診14回分の公費助成を恒久化します。
・不妊治療や不育症への支援の充実 – 不妊治療への公的支援を拡充します。流産や死産を繰り返す不育症の方を支援するために、適切な治療体制の整備や経済的負担の軽減を図ります。
・ヒブ、小児用肺炎球菌、子宮頸がんワクチンの定期接種化を進め公費助成を恒久化します。また、高齢者用の肺炎球菌、水痘、おたふくかぜなど必要なワクチンも公費で助成します。
ワクチンの公費助成拡充は、良い政策です。日本のワクチン行政は先進国から20年遅れていると言われているので、そこに楔を打ち込むのは良いことですね。また、不妊治療への公的支援の観点も非常に重要です。
◎日本維新の会(http://j-ishin.jp/pdf/honebuto.pdf)
保育の成長産業化(例)
・保育バウチャー制度の導入
・新規参入規制の撤廃、規制緩和
・ワークライフバランス
4行なので、ちょっとコメントしづらいのですが、事業者ではなく利用者を補助するバウチャーは良い政策だと思います。新規参入規制の撤廃も必要ですね。
ちょっと時間なかったんでしょうね・・・。今後に期待。
◎日本未来の党(http://www.nippon-mirai.jp/promise/index.html)
・子ども一人当たりの中学卒業まで年間31万2000円の手当を支給し、
その一部を「子育て応援券」(バウチャー)とする。
・結婚・出産が女性のキャリア形成に不利にならない社会を創る。
・子どもが虐待や育児放棄にあわないよう親の子育て環境の改善を図る。
・離婚・別居時に両親が子どもの共同養育計画を作成することを義務化する。
・家庭・学校・地域が一体となって「子育て」「子育ち」を応援する社会を創る。
・配偶者暴力に対し刑事罰を課すよう法改正する。
子育て応援券はとても良い政策なのですが、ちょっと額が大きすぎて財源を創れるかどうかは心配になるところ。
また、離婚した家庭、配偶者暴力を受けた人等、マイノリティへの視点があるのがとても良いですね。
◎みんなの党(http://www.your-party.jp/file/agenda201212.pdf)
・民主党、自民党、公明党の談合政治で導入された「子ども(児童)手当」はバラマキ政治の象徴。地域主権の観点から、地方自治体の創意工夫による現物・現金給付へと見直す。
現金給付は子どもの多い家庭への支援を打ち出すために、子どもの数に応じた傾斜配分を拡充する。
・子育てしながら働ける環境(待機児童ゼロ、家庭的保育や病児保育、一時保育の拡充、育児休暇取得の円滑化、職場の意識改革、男性の育児休暇取得率の向上等)を整備する。
・最も待機児童が多い0-1歳児については、家庭的保育の受け入れを大幅に増やす。
・家族の在り方が多様化したことを受け止め、シングルマザーのみならずシングルファザーに対する支援を充実する。
・同じ所得の場合、子どもが多いほど税負担を緩和する。
・幼児医療の無償化、不妊治療の助成拡大、小児緊急医療体制・新生児集中治療施設(NICU)の拡充を図る。
本衆院選、唯一病児保育について言及しているのがみんなの党。更に待機児童問題についても家庭的保育(これは多分、小規模保育を意味していると思います)の推進、という具体的な打ち手を用意しているので、好感が持てます。
全体的に財源のことを考えて一律補助は戒めながら、やるべきサービスはきちんとやる、というメリハリがついていて、良い公約だと思います。
◎社民党(http://www5.sdp.or.jp/policy/policy/election/2012/data/manifesto_all.pdf)
・「子どもの権利」保障の観点から子ども・子育て支援に取り組みます。保育・地域の子育て支援・学童保育などのサービス支援と児童手当などの経済的支援は車の両輪です。両者のバランスを取りながら、特に緊急性を要しているサービス支援の拡充に取り組みます。
・社会資源の有効活用(認可外保育施設への支援、保育ママ制度の拡充、小中学校の空きスペース等を利用しての認可保育園分園化、幼稚園の認定こども園への移行促進など)を積極的に行い、待機児童の解消を図ります。
・保育・教育施設の客観的基準(職員の配置基準、面積基準等)を欧米諸国並みの水準に引き上げます。
・先進諸国は児童ポルノに対して厳しい規制を行っています。日本においても、子どもの人権を守る観点から子ども買春の根絶と児童ポルノの規制強化に向け、「児童買春・児童ポルノ禁止法」の改正に取り組みます。なお、この際、表現の自由を侵したり、表現者に過度の萎縮をもたらす強権的なものとならないように留意します。
・子どもに関する総合的な政策を一元的に行う「子ども省」(仮称)をつくります。
現金給付よりサービスに重点を置いたり、社会資源の有効活用など、正当な政策です。ただ、「保育・教育施設の客観的基準(職員の配置基準、面積基準等)を欧米諸国並みの水準に引き上げます。」については、特に面積基準引き上げは都市部では現実的には不可能です。今の基準を崩さず、質を高めるのが現実的な方向性です。
◎国民新党(http://kokumin.or.jp/ckfinder/userfiles/files/seisaku.pdf)
・記述見つからず
こ、これは・・・。あんまり関心ないのであれば、ちょっと残念ですね(涙
◎新党改革(http://shintokaikaku.jp/manifesto2012.html)
・待機児童解消のための幼稚園・保育園の増設、費用の無料化の検討を通じて、バラマキ政策ではない、少子化対策の再構築を図っていきます。
・男性の育児参加、家事の時間を増やしていくため、通勤時間や労働時間の短縮、ワークライフバランスの拡充も進めていきます。
やりたいことは分かりますが「どうやって」の記述が全くないので、そこが残念ですね。この「どうやって」が一番難しいところなんですよね。
◎新党日本(http://www.nippon-dream.com/wp-content/uploads/nippon2012m.pdf)
超少子・高齢社会に相応しい“老保一元化”の宅幼老所と小中学校30人学級を全面導入!
手法が具体的な分、自分の頭で考えて作ったんだな、という意気を感じます。
子育て支援分野への言及はこの一文のみですが、新党日本の場合、田中康夫議員の一人政党のため、全分野カバーせずに一点突破方式でアリなような気はします。
◎新党大地(http://www.daichi.gr.jp/images3/pdf/daichi_chikai.pdf)
・女性の視点に立った子育て、介護等の制度、施設の充実。女性の積極的な社会進出の推進、女性議員の増加。
・政治、ビジネス、介護、看護、子育て等、女性の役割が強く求められています。女性の社会進出、登用を積極的に進めます。
北海道オンリーの地域政党。それにしても「女性の視点に立った子育て」っていうのは何なのでしょうか。男性の視点も必要だと思うのですが・・・。
◎共産党(http://www.jcp.or.jp/web_policy/2012/11/2012-16.html)
・即時原発ゼロへ、放射能汚染から子どもたちを守ります
・妊娠、出産による解雇を許さず、育児休業制度の改善、男性の取得促進などをすすめます
・「子ども・子育て新システム」による保育制度改悪は中止し、国の責任で認可保育所をつくります
・小児科、救急医療体制の確立をはかります
・子育ての不安にこたえる体制をつくり、児童虐待の防止対策を強化します
・子どもの豊かな成長をはぐくむ地域づくりをすすめます
「財源について考えましょう」の一言。
◎まとめ
自民党は子育て支援に熱心な公明党と連立してマイルドな方向性になってほしいです。もっと言うと自公民で大連立して、粛々と現実的な中道路線を歩んで頂きたいですね。今回子育て支援マニフェストで光っていたのは、みんなの党ですね。また、今回注目の第三極は、もうちょっと時間があったら、政策の詳細を詰められたのでしょうね。惜しいですが、今後の動きに期待です。
いずれにせよ、子育て家庭の皆さん、選挙には行きましょう!でないと、子育て支援予算は削られる一方です。子どもたちのことを、誰よりも考えられるのは、我々親世代です。
子どもたちに「選挙行ってくる」と笑いかけるのは、とっても良い社会教育ではないでしょうか?
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当記事はNPO法人フローレンス代表理事 駒崎弘樹の個人的な著述です。
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