使命の前に、モチベーションは必要ない
インターン生から「どうやってモチベーションを維持しているのですか?」と聞かれて、答えに詰まった。
そういえば、NPOを起業してから今まで一度も「自分の」モチベーションについて考えたことがなかったからだ。
「社員の」モチベーションについてであれば、いつも考えている。どう声がけしたら、モチベーションは上がるのか。こんな叱り方したら、モチベーションを下げるだろう、と。
けれど、仕事に対する自らのモチベーションについて考えたことは、一度もなかった。ただの一度も。その必要性がなかったからだ。
モチベーションが高いか低いかで言ったら、常に高い。いや、言葉が違う。モチベーションという言葉を越えている。モチベーションなんて「関係ない」のだ。気分が乗ろうが乗るまいが、意識が向き、体が動くのだ。なぜか。僕には使命があるからだ。
僕は、子育てしながら働くのが当然の社会を創りたい。働きながら学んだり、地域社会に貢献したり、そういう幾つもの世界を自らの中に持つ自由のある、真の意味で豊かで幸福な社会を創りたい。そのためには、父親も当然子育てをして、家事もする。自らの責務として、楽しみながら。その社会においては、全ての子どもたちには良質な保育や教育が提供されていて、どんな境遇に生まれても、社会がその子を見捨てないだろう。親以外の多様な人達によって手が差し伸べられ、周りの皆から愛され、子どもたちは自己肯定感を育む。
人々は尊厳ある仕事で働きながら、社会のために様々な公益的活動に笑顔で関わる。政治にも自分ごととして建設的に関わり、同時に自分達でやれることは自分達で助けあってやっていこう、と動く。
世界一の少子高齢社会に一番乗りして、あらゆる受難があれど、それをしなやかに受けとめ、したたかに解決し、その解決策をいずれ日本と同じ問題に苦しむだろう他国に輸出する。そんな風に世界に貢献する国。世界最幸で、世界最貢の日本。
僕は自分が夢見るそうした社会を、国の在り方を、心から実現したいと思う。それが自分の使命だと心から信じている。勝手に。しかし強烈に。
いずれ出会うはずのその社会像と、目の前に広がる現実の中で苦しむ人々や数々の不条理とを見比べると、いても立ってもいられない。動かなきゃと思う。動きたいと思う。モチベーションなど感じる隙もなく。
そして動く。動くと、1ミリずつだが、しかし確実に近づく。見て触れたい社会に。すると楽しい。日々は辛いけど、楽しい。だからまた動きたくなる。そしてまた近づく。
もしかしたら、死が僕を迎えに来るまでに、僕はその社会を見ることはできないかも知れない。けれどそんなことは関係ない。僕は既にして、報われている。使命とともにあることで。
多分そういうことを、インターン生には伝えたかったのだと思う。
そして彼女達が社会に出たらこう聞いてみよう。
「あなたの使命には、出会えたか」
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当記事はNPO法人フローレンス代表理事 駒崎弘樹の個人的な著述です。
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