もうすぐ選挙だから、この映画を紹介しよう
日本の選挙について、この映画を見れば全てが分かる。そして正しく絶望してほしい。
本作品「選挙」(想田和弘監督)は観察映画という、一切のナレーションや音楽を排し、まるでそこで自分がその場に「いた」ような錯覚を感じさせる手法を使っている。がゆえに、我々は選挙活動という異常な場に、「立つ」ことになる。
コイン商の「山さん」がなりゆきで、全然関係ない川崎市で市議会議員選挙を戦うことに。駅前で立って改革を叫べど、人々は何もそこにないかのように通り過ぎる。団地の前で「宣車」(街宣車)から名前を連呼。妻は「家内」と言わなきゃダメ、と先輩に言われながら、必死に走り回る山さん。
辛い。見てて辛い。友人の選挙活動を何度も手伝っている僕は知っている。これは事実だ。この「痛さ」。そして自分が痛いことは、やっている自分達が一番よく知っている。でも笑顔で名前を連呼。これが選挙だ。痛み。なんて痛みだろう。
画面に出てくるボランティアや後援会の皆さんは高齢者。なぜ?若者は投票なんてしないのだ。汗水たらして政治家を育てようなんて思わないのだ。高齢者寄りの政策になる、なんてのは当然だ。一番辛い時に一緒にチラシ折ったのは誰か。彼らは分かっているからだ。
我々は何を選んでいるのだろう?これが民主主義なのか?ではどうすれば良い?そういったことにこの映画は一切答えを出さない。単に我々は突きつけられるだけだ。圧倒的なシュールな現実を。感じるだけだ。現実の持つ痛みを。
もうすぐ選挙だ。その前にこの映画を見てほしい。見た後、私たちはこれまでとは同じように、選挙というものを見られなくなるだろう。でもそれで良い。全ての国民に感じてほしいからだ。「我々の」民主主義というものの痛みを。
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当記事はNPO法人フローレンス代表理事 駒崎弘樹の個人的な著述です。
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